「お金を使わない私」が「お金を稼ぐ」ことの意味 「買わない生活」最終回、仕事と報酬を考える

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 ……というのが1つの考え方だろう。無論、そういう人生もアリだとは思う。聞くところによれば、近頃のワカモノの間では早い時期にお金を貯めて、あとは運用益で自由に生きるという「アーリーリタイア」が1つの理想として注目されているらしい。

ふむふむ……っていうかそれってもしかするとほぼ今の私……? ま、すでに57歳ゆえ「アーリー」ってほどじゃないが、だとしても人生100年時代なのだからまだまだアーリーと言えないこともない。

そして何と言っても私、日本でも有数の極小支出で楽しく生きていけるスキルを身につけてしまったわけですから、その気になればいつだってこのような道を本格的に追求することもできないわけじゃないのである。

実際、会社を辞めるときは、少なくともしばらくの間は仕事から遠ざかってノンビリしたいと思っていた。何しろ新聞記者ってもう本当に休みが取りづらい仕事で、長期の旅行とか全然できぬままフト気づけば50歳になっちゃったんですから。

で実際、辞めてすぐ、っていうか正確には辞める直前にたまりにたまった有給休暇の消化期間に入るや否や、夢のインド・アーユルヴェーダ旅行に行ったのだった。いやもう毎日マッサージ三昧ですよ! それを約3週間! 同宿の欧米人もびっくりの贅沢!

贅沢旅行に飽きて「仕事の手ごたえ」が欲しくなる

で、それはそれで無論楽しかったんですが。

はっきり言えば、わたしは驚くほどすぐに飽きてしまったのだった。最初の1週間は英語はできないし日本人は全くいないしインド人の顔が一見めっちゃ険しいしで失敗あり笑いあり涙ありで飽きる間も無く日々を生きのびるのに必死だったんだが、その苦難を乗り越え落ち着いてきたら、極楽マッサージの至福の時間はともかくとして、それ以外の「何もしない」時間をたちまち持て余してしまい、結局何をやったかといえば、わがフェイスブックページにせっせと旅の模様を面白おかしく記事にして投稿したのだった。

つまりは私は仕事がしたかったのだよ! お金になるかどうかは別として、何かを形にして生み出して、人に受け取ってもらい、喜んでもらいたかった。その手ごたえがどうしても欲しかったのである。

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