ヘッドハンター直伝「成長し続ける人」見抜く質問 世界が求める「悪ガキ」はリスクを大切にする

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リスクをとれる「悪ガキ」的リーダーとして私がまっさきに思い浮かべるのが、資生堂を率いる魚谷雅彦氏です。魚谷氏は、私がビジネスを通じて出会うことのできた経営者の中でも特に好奇心が強く、お茶目な面を持った方です。

魚谷氏は、150年の歴史を持つ資生堂に外部から社長として招かれ、グローバルビジネスを牽引して資生堂を急成長させました。社長就任時の2014年に7620億円だった同社の売上を、3年後の2017年には1兆50億円まで伸ばしたのです。

魚谷氏の「リスクテイキング」と言えば、なんと言っても前職の日本コカ・コーラ社での取り組みがあります。

若い読者はご存じないと思いますが、1990年代半ば、缶コーヒー「ジョージア」のCMが一世を風靡しました。当時まだそれほど売れていなかった女優、飯島直子氏が疲れているサラリーマンに優しく語りかける「男の安らぎ」キャンペーンです。このCMをきっかけに、飯島直子氏は「癒やし系女優」と呼ばれるようなったそうです。

これが実は、魚谷氏がコカ・コーラのマーケティング本部長に就任した直後のデビュー作でした。しかもこのCM、すでにアメリカで進行中だったCMを独断でキャンセルし、数千万円の広告費をドブに捨てての大決断だったのです。

「本社からの指令は絶対」。これは外資の掟です。それを無謀にもキャンセルしたのですから、そのリスクは計りしれません。本人は意識していないと思いますが、魚谷氏は私の言う、いい意味での「悪ガキ」的リーダーです。

この無謀な「悪ガキぶり」は、さすがに社内だけでなく大事なお客様である系列ボトラーをも驚愕させたようです。しかし、彼らは魚谷氏の真意を知るに及んで熱烈な支持者へと変貌し、結果は空前の大ヒット。「ジョージア」のシェアは3年で10ポイントも上げ、53%となったのです。

「リスクをとる習慣」のある人だけが成長し続ける

そこまで大きなリスクはとれない、と思われるかもしれません。ですが、安心してください。もっと小さなリスクをとり続けていれば、次第に大きなリスクにも向き合えるようになります。

具体的には、以下のようなことです。

・高校卒業後、親元を離れて1人で生活する
・学ぶ場所を早いうちに海外に移し、考え方も行動規範もまったく異なる外国人と意見をぶつけあう
・海外の異なる文化の中で働く
・転職する
・絶対に無理と思ったことに挑戦する
・不条理なことを言われたら、相手が上司であろうと堂々と歯向かう
・世の中の不正に立ち向かう

このように安全が保証されていない道を、怯むことなく突き進む行動こそ、「リスクテイキング」です。このようにリスクをとって進むことによってこそ、人は成長を続けることができるのです。

(構成:小関敦之)

妹尾 輝男 ヘッドハンター、コーン・フェリー元日本代表

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せのお てるお / Teruo Senoo

1975年、横浜国立大学卒業。ロンドン、バミューダ諸島、東京にて石油製品トレーディング会社に勤務した後、1988年、スタンフォード大学で経営学修士(MBA)取得。ベイン・アンド・カンパニーを経て、世界最大の人材組織コンサルティング会社コーン・フェリーに入社。

同グループで30年以上、主にグローバル・トップ企業のエグゼクティブ・クラスを対象に、ヘッドハンターとして第一線で活躍。その間、日本法人社長を9年間、会長を1年間務め、現在は特別顧問。ヘッドハントしたエグゼクティブの数は400人を超える。

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