1980年代後半から拍車がかかったバブル、円高で最も得をしたのは誰か。それは、日本競馬界と社台グループである。
アメリカの不況と円高があいまって、あのサンデーサイレンスをわずか16億円で購入できたのである。サンデーサイレンスがいなかったら、日本の今の競馬は存在していなかっただろう。海外に遠征することなど、まったくなかったかもしれない。競馬界全体への効果は1兆円を超えるのではないかと思っている。
超円安時代は「超円高時代の逆」をやれ
質的にも量的にも世界一のサラブレッド生産国となった日本。超円安の今、何をすべきか。バブル期・超円高のときの逆、つまり「サンデーサイレンスを輸出すること」である。
もちろん、サンデーサイレンスはこの世にいないが、日本のすばらしい馬たちを種馬として、繁殖牝馬として超高値で売ることである。サラブレッドの生産ほど、資本の論理に忠実な世界もない。交配のときには、超一流と期待された馬だけが、超一流の繁殖牝馬と交配できる。そして、超一流の調教師に預けられ、最も丁寧に育てられ、種馬になるためにローテーションを組まれる。すばらしい戦績を残した馬は種牡馬になり、また超一流の牝馬と交配される。
つまり、勝ち残りシステムなのである。そして、実際の子供たちのレースでも、パフォーマンスは父親よりも母親による影響のほうが圧倒的に大きいから、優秀な牝馬と交配されない時点で負けなのである。
また、近年は技術の発達により(それと資本の原理の貫徹により)、昔では考えられないぐらい、1頭の種牡馬が200頭を超える牝馬と年間に交配するようになった。質でも量でも、優秀な子供が出てくる可能性が高まるのである。
日本がサラブレッドの生産で世界一になったのだから、世界に血を輸出する必要がある。それは、世界のためではなく、日本の馬たちのためである。
なぜなら、日本で活躍した馬の血が欧州やアメリカで広まると、彼らの活躍により、それと類似の血脈をもった馬を世界中で求めるようになる。類似のものが多く存在するのは、日本である。さらに、日本の馬が世界に広まる。
多数派は勝つのであり、株式市場も民主主義も資本主義もサラブレッドの生産も、力が歴史を変えてしまうのである。高い馬と認識されないと、いい馬でも安い牝馬と交配されてしまう。確率的にいい牝馬でない可能性が高い。そうすると子供を残せなくなる。
したがって、実力だけでなく、世界の人々の認識も(実は実力以上に)重要なのである。だから、短期的には合理性のないフランスの凱旋門賞へ挑戦も、一度勝つまでは「やっぱり日本の馬は世界一だ」と名実ともに彼らに思い知らせるためにも必要なのである。
さて、26日は宝塚記念(阪神競馬場第11レース、距離2200メートル、G1)。そのような馬になることを願って、エフフォーリア(2枠4番)の復活に賭ける。馬券的にはアリーヴォ(7枠13番)やオーソリティ(1枠1番)が狙い目に見えるが、そんなことは忘れて、エフフォーリアが凱旋門賞を勝つことを期待して、ここも圧勝してもらいたい。
(当記事は「会社四季報オンライン」にも掲載しています)
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