これが日本円の現在の状態だ。この20年は明らかに日本市場の金利が低かったので、円安方向に大きく歪んでしまった。
その結果、輸入品が割高になったが、日本の輸入は資源や食料品などの必需品が中心で、減らすことはできず、輸入品への支払いが激増し、日本経済全体の購買力が低下した。さらに、これらの必需品は世界的にも高騰、さらに原油などは金融市場の思惑で実物取引とは離れて先物価格が急騰し、それが標準的な状態となり、過度に割高な水準が続いた。資源高、円安のダブルパンチで日本は貧しくなっていった。
これは、2002年から2007年までの「実感なき景気回復」といわれたときの状態でもある。生産も輸出も増えて景気がよいと言われたにもかかわらず、国民は貧しくなったと感じた。円安と資源、原材料、食品高で、輸出を増やして稼いだのをはるかに上回る輸入品への支出増加となってしまい、自由に使える所得が減ってしまったからである。
日本経済がさらに弱くなった「3つの理由」
現在もまったく同じ状況だが、さらに悪い。現在、日本経済が過去に比べてさらに弱くなってしまった理由は3つある。
1つ目は、実質的な経済が弱くなってしまったことだ。過度の円安によって生き残ることができる企業とは、「本来は価格勝負しかできないのに、その価格も円安でハンディキャップをもらっている状態で、ぎりぎり赤字にならないで生産を続けてきた生産者」だ。
中小企業だけでなく、大企業も本質的には同じで、過度の円安に頼って甘えているうちに「割安ということしか売りがない生産者」になってしまい、しかも、それが円安というおまけをもらってぎりぎり生き残っているから、付加価値も生み出さない。過度の円安で損をしているすべての消費者の損だけが残ってしまう。
そして、為替が正常な方向に戻ろうとすれば、これらの生産者はつぶれてしまうから、大騒ぎをして政府に働きかける。この循環で、弱い生産者ばかりになってしまい、交易条件が、名目の為替レートの影響ではなく、実質的な為替レートでも弱い国になってしまった。
この結果、もちろん賃金も安いままになった。過度の円安で割安に換算されているという面もあるが、同時に、上述の弱い生産者の下で働くことにより、企業の生産性が低いということは労働者の生産性も低くなるから、実質でも安くなってしまった。
名目的にも、実質的にも、円安により日本の賃金は低くなってしまい、日本の国民は消費者として購買力を失い、労働者として生産性を失ってしまったのである。
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