「買わない生活」がお金を回すことにつながる理由 「本当の意味」で「お金を制する」ということ

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また現実問題として、わが尊敬する知人で寄付を求めている人など、よく考えたら特に見当たらないのだった。みな決して大儲けなどしてはいないけれど、お店であれ、事業であれ、自分にできることをできる範囲で誠実にコツコツやって地道にファンを獲得し、人生を成り立たせている人たちばかり。だからこそ私は彼らを尊敬しているのだ。

つまりは誰も、天から降ってくる他人からの一方的寄付など欲してはいないのである。

自分の好きな相手を励まし喜ばせるために「買う」

そう考えていくと、一番自然で、持続性が高くて、人間関係もぶっ壊さない「お金の使い方」とは、寄付などではなく、その尊敬する人たちが作っているものや売っているものを正当な価格でせっせと「買う」ことなんじゃないだろうか?

そうだよ。買うって、よく考えたら実によくできた行為だ。

寄付とは違って、お金と引き換えにちゃんと対価をもらうってところがいい。上下関係など生み出さず、実に自然で対等な形で、相手に対して「こんないいモノを作ってくれてありがとう」「売ってくれてありがとう」とメッセージを送ることができる。最高だ。

さらにそれによって、相手はそのお金と、お金に込められたわが思いを元に、これからもよい商品を送り出すことに邁進してくれるに違いない。いやーまさに永遠の循環。エンドレスにみんなが幸せではないか!

つまりは売ったり買ったりというのは、世の中で最も洗練された、持続可能な支え合い行為なんじゃないだろうか……? という結論に至ったのでありました。

というところまで書いて、ハタと気づいた。

いやー……まったくなんということだろう。「買わない」生活の行き着く果てが、まさかの「買う」生活……?!

ふ、ふり出しに戻っちゃったのか……?

いやいやいや、そんなはずがあるものか。そうだよ今の私がたどり着いた「買う」は、かつての私がやっていた「買う」とはまったく違うものなのだ。

かつての私にとって、「買う」とは自分の欲や見栄を満たすための手段であった。でも今は違う。「買う」とは、自分の好きな相手を励まし喜ばせるための手段である。相手へのメッセージである。応援でありエールなのである。

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