スタバ以上の旋風?「ブルーボトル」の自信 あの会社とも交渉、でも結局は単独進出

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とりわけ、ブルーボトルに興味を持ったのは、(サンフランシスコという土地柄もあって)ハイテク業界の大物たちである。

サンフランシスコに限らず、米国ではコーヒーショップで仕事やミーティング、面接まで行うのは日常的な風景だ。その潜在性に目を付け、2012年10月には、創業メンバーのほかシスコシステムズの最高戦略責任者を務めた経験を持つマイク・ボルピ氏らが2000万ドル、2014年1月にはツイッター創業者のエヴァン・ウィリアムズ氏やインスタグラム創業者のケビン・シストローム氏、グーグル・ベンチャーズらが新たに約2600万ドルを出資。潤沢な資金をテコに、現在サンフランシスコやニューヨークなどで14店舗を展開しているほか、ファーマーズマーケットなどにも出店している。

日本の現地企業と交渉、だが結局単独で

店内の真ん中に大きな焙煎機が鎮座する

そのブルーボトルにとって日本は、冒頭のフリーマン氏の言葉通り、特別の場所だ。「日本はブルーボトルにとってDNAと言える場所だ」と、会長を務めるブライアン・ミーハン氏は言う。同氏はブルーボトルの成長性にいち早く目を付け、会長として多くの投資家を引っ張ってきた立役者でもある。

「日本の喫茶店では店主が豆を選んで、自分の手でコーヒーをドリップするという文化が昔から根付いている。そういうスタイルにジェームスは影響を受けた。彼と知り合った頃から、彼はいつかずっと日本で店を開きたいと言っていたんだ」。実際、日本には、フリーマン氏のお気に入りの喫茶店がいくつもある。

スターバックスもそうだが、外資系企業が日本に進出する場合、日本企業と合弁を設立するケースが多い。ブルーボトルも当初は複数の小売りと交渉を進めた。とくにローソンとは踏み込んだ話をしていたようだ。ローソンは「ブルーボトルの幹部の方と、新浪(剛史)前社長がハーバード大学時代の知り合いで、出店する立地などのアドバイスを行ったようだ」と説明する。

ローソンとどの程度までの話がなされたかは判然としない。しかし、いずれにしろ、単独での進出を決断した。「時間がかかるかもしれないが、自分たちのやり方で完璧を追求できる」(フリーマン氏)からだ。2014年1月にまとまった資金を調達できたことも少なからず影響しているだろう。

ブレンドのほか、単一生産地・品種の豆を使う「シングルオリジン」コーヒーを販売。ブレンドの価格は450円と、スターバックスの最も大きいサイズより高額だ

“聖地”とも言える日本での初出店の場所に清澄白河を選んだ理由を、フリーマン氏は、「この街は高い建物が少なく、サンフランシスコによく似ている。まずは東京の中心部から離れたところで腕を磨いて、それから都心に進出したいと思った」と説明する。3月には南青山に2号店を出す予定。「これからも日本での事業には力を入れる。日本での展開に使えるよう、去年たくさんの資金を集めたからね」(ミーハン氏)。

ただし、急速に店舗を拡大するというのではなく、店舗数など数値目標も立てていない。「数値目標というのは、失敗へのレシピ。私たちの場合は、いい土地を見つけられたらそこに出店する、というスタンスだ」(ミーハン氏)。

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