キーエンス「時価総額4位企業」の淡泊な株主総会 具体性を欠いた説明に個人株主からは不満も

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中田有社長は、株主からの質問に対して、「株式分割をすれば(株主が増えて)多くの方に応援してもらいやすくなる」と回答。そのうえで、デメリットについては多くあるとして、「これが1つの要因と伝えることは難しい」と説明するにとどまった。

具体性を欠いた説明に冒頭の個人株主は「時価総額4位の社長のコメントとしては残念」と話す。

総会では、株価と配当の水準や業績予想についての質問も出たが、特筆すべき回答はなかったという。なお、創業者の滝崎武光名誉会長(77歳)は、総会で一言も発しなかったものの、「『動かざること山のごとし』で存在感は大きかった」(総会に出席した株主)。

賛成率が改善した理由は好業績と姿勢の変化

とはいえ、今回の株主総会に諮られた議案に対する賛成率は悪くない。

株主総会後に公表されたキーエンスの会社議案に対する賛成率(写真:編集部撮影)

6月14日に開示された資料をみると、株主への配当金額を決める「剰余金の処分」は79.7%。滝崎名誉会長と中田社長の取締役再任に対する賛成率も、それぞれ88%、85.6%だった。剰余金の処分が60%台、会長の再任が70%台と低迷していたころと比べると、大きく改善している。

背景にあるのは好調な業績だ。2022年3月期の営業利益はコロナ前の水準を超える4180億円を計上した。純利益は3033億円で3期ぶりに過去最高益を更新。さまざまな業界の工場で無人化・省人化の動きがコロナ禍を機に加速しており、業績の追い風となっている。

2019年11月に1株を2株とする株式分割を実施した効果も続いているようだ。株式分割の際、分割した割合に合わせて1株あたりの配当を減少させることが多いが、キーエンスは配当金を維持したことで実質1.5倍の大幅増配となった。

株式分割と同時期には、証券アナリストや機関投資家向けに決算説明の電話会議を開始。業績予想は非開示だが、今後の見通しを考えるうえで役立つ、従業員の採用動向や商品の出荷状況は確認できるそうだ。

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