パナソニック「指定価格」導入に揺れる家電量販店 メーカー主導の「価格決定」に広がる期待と懸念

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パナソニックが打ち出した新たな取引形態に期待の声が上がる一方、「面白くない」と本音を漏らす家電量販店も。写真はイメージ(編集部撮影)

「こちらの商品は、メーカーとの関係でお値引きができないんです」。家電量販店の接客スタッフが発したその言葉に、都内に住む30代の男性は思わず耳を疑った。

家電量販店での買い物の際、価格交渉をした経験のある人は多いのではないだろうか。この男性も、「周辺の量販店を何度も回り、いちばん安い価格を提示してきた店舗で購入するのが当たり前だった」と語る。

ところが、そんな「当たり前」に変化が起きている。総合家電大手のパナソニックが、新たな取引形態の導入を進めているのだ。

競争力のある製品から導入拡大

その取引形態は、パナソニックが在庫リスクを負担する代わりに、価格決定権を持つというもの。同社の指定した金額で販売価格が統一されるため、消費者にとってはどの販売店で買っても同じとなる。メーカーは販売店側で必要な数量だけ商品を納入し、売れなければ返品に応じる。

パナソニックのカタログには、新たな取引形態の導入対象製品に「一部店舗ではメーカー指定価格での販売となる」との注記がある(編集部撮影)

2020年から導入を始め、2021年度には同社の家電製品の8%、白物家電に限定すると15%がこの形態で取引されている。ヘアドライヤーの「ナノケア」など競争力のある製品が主な対象となっており、今後もそうした製品で導入を拡大させていく方針だ。

メーカーが流通業者の販売価格を拘束することは、独占禁止法で違法とされている。 一方でパナソニックのスキームは、同社が在庫リスクを負うことでメーカーが直接販売していることになり、販売価格を決めても違法とはならない。

「この動きは30年ぶりの転換点だ」。競争政策を専門とする、東京大学大学院経済学研究科の大橋弘教授はそう指摘する。

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