なぜ、彼らはそこまで自分に向けられた他人の感情を怖がり、空気に従おうとするのか。
それは、自分に自信がないからだ。自分に自信がないから、自分に向けられた人の気持ちに過敏になり、それをちょっとでも想像しただけで強い緊張が走る。
自分に自信がないから、100人の中の1人として埋もれていたいと願い、自分に自信がないから、ひたすらメンタルの安定を求め、微細なリスクすらも取らないゼロリスク志向へと突き進む……。
自分が提案したお店へご飯を食べに行ったとしたら…
そんな心理状態では、デートどころではない。いい子症候群の若者たちにとって、デートや恋愛は、メンタルを不安定にするリスクの塊そのものだ。たとえば、仮に自分が提案したお店へご飯を食べに行ったとしよう。万が一、そのお店の雰囲気が悪かったら、もう気まずくて息もできない。ご飯の味より申し訳なさで頭がいっぱいだ。さらにそんなとき、相手が「別にいつも行く○○(チェーン店)でいいよ」なんて言ってくれようものなら、そんな神レベルの素敵な人が自分のことを好きになるはずはないので、もうデート失敗確定。今後、100年間は異性と食事には行きません。
あるいは、レンタカーを借りてドライブでも行ってみようか。でも万が一、行き場所が定まらず、「ここさっきも通ったな……」とか思われたら、もうそんな空気の中じゃ息もできない。何とか窒息死だけは免れたとしても、その心の声がトラウマすぎて、やはりデート失敗確定。今後100年間、自分からドライブには誘いません。
と、たしかにこんな心理状態では、デートどころではない。もはやその場の空気に対処することに精いっぱいで、相手のことは目に入っていない。デート後も疲労感でいっぱいだ。そして何より、そんな自分を容易に想像できるから、最初からデートしようとは思わない。
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