若者のデート離れを加速させる「ゼロリスク志向」 若者の自信のなさが恋愛にも影響する時代に

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私は、2010~2012年頃だと思っている。根拠となるデータはやはり枚挙に暇がない。たとえば、大学生が就職先を選ぶ理由として「自分のやりたい仕事ができる会社」が低下し始め、その代わり「安定している会社」が上昇し始めたのも(マイナビ 2022年卒大学生就職意識調査)、新入社員にとって「仕事が面白い」かどうかは重要ではなくなったのも(日本生産性本部 平成31年度 新入社員「働くことの意識」調査)この頃からだ。

2010年代以降に20代を迎えた彼らは、児童・生徒のときに教育環境の変化も経験している。いわゆるゆとり教育の導入だ。このとき改訂された学習指導要領は、1993年から2010年にかけて小学校へ入学した児童に適用されており、この世代がちょうど今、20代を丸ごと形成している。

「いい子症候群」的気質が恋愛や結婚に影響を与えている

恋愛に関しても、時期が符合するデータがある。たとえば、日本性教育協会が6年ごとに調査している「青少年の性行動調査」によると、2005年調査までは性交経験率は上昇していたが、2011年調査から男女とも低下傾向に転じている。

むろん、これらのデータを構成する要因は多様で複雑だ。ただ、ここまで多くのデータが歩調を合わせたようにタイミングを同期させていることを鑑みると、「いい子症候群」的気質が恋愛や結婚にも強い影響を与えていると考えざるをえない。

ここまで読んだ方は、今後この傾向はどうなるのか、も気になるだろう。私が主に研究対象としているのは大学生から20代であるため、現在、10代の性向をよく知る人たち、つまり中学校・高校の教諭や教育関係者との対話を精力的に進めている。

ただ、今のところ、子供たちの主体性を重んじた教育方針を強めているにもかかわらず、いい子症候群的気質が変わる兆しはなく、むしろ強化されている状況も見られる。今なんとかしなければ、今後しばらくは「いい子」を装った指示待ち人材が大量に産業界へ送り出され、若者の婚姻率は下がり続けることになるかもしれない。

金間 大介 金沢大学融合研究域融合科学系教授、東京大学未来ビジョン研究センター客員教授

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かなま だいすけ / Daisuke Kanama

北海道生まれ。横浜国立大学大学院工学研究科物理情報工学専攻(博士)、バージニア工科大学大学院、新エネルギー・産業技術総合開発機構(NEDO)、文部科学省科学技術・学術政策研究所、北海道情報大学准教授、 東京農業大学准教授、金沢大学人間社会研究域経済学経営学系准教授、2021年より現職。主な研究分野はイノベーション論、技術経営論、マーケティング論、産学連携等。著書に『イノベーションの動機づけ:アントレプレナーシップとチャレンジ精神の源』(丸善出版)、『イノベーション&マーケティングの経済学』(共著、中央経済社)など。

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