妊娠中に大臣就任「政治家」も産育休取る国の凄み フィンランドでは誰もが当たり前に取得する
一方、日本でも18歳未満の子どもがいる母親の就業率は72.4%とフィンランドとあまり変わらないが(厚生労働省発表2019年版国民生活基礎調査の概況)、うち正社員で働いているのは26.2%と少ない。非正規やパートで働く人のほうが圧倒的に多いのだ。
また、上場企業の取締役会に占める女性の割合は、フィンランド商工会の調べで約3割(2020年)。まだ半数という目標には達していないが、女性役員の人数もこの10年で3倍に増えている。これは世界的にも高い数値となっていて、例えば、コンサルティングファームのデロイトが2019年に発表した調査によると、世界60カ国のうちフィンランドは32%で4位に入っている。
上位2カ国は順にノルウェー41%、フランス37%だが、いずれもクオータ制(一定の比率で女性に優先的にポストを割り当てる制度)を採用している。それに続くスウェーデン、フィンランドは、クオータ制を採用していない。
省庁でも、職員の男女比は半々に近づきつつある。中でも、外務省は女性のほうが多く、職員の7割を女性が占める。外交官の数でも女性が男性を上回り、大使などの代表者も男女でほぼ同数だ。
しかも最近では、外交官研修に合格する人たちの多くが女性となっており、一部の男性外交官は「僕は絶滅危惧種」と冗談で言うほどだ。これだけ女性が増えているのは、語学力に優れ、国際政治や社会学を学ぶ優秀な学生に女性が多いためだという。
女性活躍の背景
これほどまでに、女性が決定権のある立場に就くようになってきたのはなぜか。まず、能力に性別は関係ないことが幅広く認められてきたことが背景にある。例えば、女性を経営陣に登用している企業は業績がいいことが示された。
フィンランド版の経済同友会にあたる「ビジネス・政策フォーラム」(EVA)が2007年に発表したレポートによると、上場企業では女性経営者の企業のほうが、男性経営者の場合と比べて平均で利益率が10%高いという。
レポートでは、あくまでもヒアリングによる推論としながらも、女性のほうがビジネスの課題やリスクを見つけて早めの解決につなげていく傾向が強く、教育レベルも高くて専門知識や経験も豊富なうえ、国際感覚やコミュニケーションに長けているため、と理由が述べられている。
メディアもこうした調査結果や、ロールモデルとなるような女性たちを盛んに取り上げてきた。さらに中央省庁や公的機関で積極的に女性を登用していったことも影響している。今や修士号や博士号を取得するのは男性よりも女性のほうが多くなり、アシスタント業よりも専門職に就く女性が増えたことも大きい。
また、フィンランドには「平等法」という法律があり、30名以上の従業員がいる企業は、男女平等に関する行動計画を2年に一度提出しなければならない。計画づくりには従業員の代表も必ず加わり、職場での平等実現に向けて、環境、給与、仕事の内容など全般でアセスメント、対策の検討、計画づくりを行い、達成度を定期的にフィードバックする。
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