妊娠中に大臣就任「政治家」も産育休取る国の凄み フィンランドでは誰もが当たり前に取得する

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平等法は2015年に改正され、男女だけでなく、性的指向や性自認も含めて、性的マイノリティーの人たちにも配慮された内容となった。

この法律は企業だけでなく教育現場にも適用されていて、学校でも3年に一度、平等に関する計画づくりがされる。法務省のもとには平等に関するオンブズマンが設置されており、法律のもと、人権が平等に扱われ、不適切、差別的なことがないよう監視している。

政治の世界でも目立つ女性たち

政治の世界ではどうか。2019年の選挙では当選した国会議員200名のうち、女性が94人で47%を占めた。その後、首相が交代してサンナ・マリン内閣が誕生した際には、閣僚19名中12人が女性となった。

2000年以降の閣僚の男女比はほぼ半々で、これまでにも女性のほうが多かったときもあれば、そうでないときもある。もはや男女の割合で一喜一憂する時代ではなくなり、「性別に関係なく、ふさわしい人が選ばれる」と冷静に受け止められている。

実際、フィンランドの公共放送YLEの調査によると、選挙で誰に投票するかを決める際に、性別は影響しないとの結果が出ている。以前は性別が投票理由の1つになりえたが、今は実力などの要素を重視するのだという。

一部北欧諸国では女性の割合が一定になるようクオータ制を導入し、議席の少なくとも4割以上が女性になるようにしている。しかし、フィンランドでクオータ制が定められているのは、任命制の地方と政府の委員会のみ。選挙にクオータ制はないのに、約半数が女性になっているのだ。

フィンランドは全国を14のブロックに分け、非拘束名簿式(候補者名または政党名のいずれかを書いて投票する方式)の比例代表制選挙を行う。この方式では、選挙のたびに政権や与野党の交代が起こりやすい。どの党も支持率が拮抗しているので、より多くの有権者の票を勝ち取る努力が求められる。

そのため、各党は老若男女を問わず幅広く有権者の声に耳を傾け、多彩な候補者を揃えなければならない。投票率を見れば、1970年代以降は男女の投票率がほぼ同じになっており、今では女性の投票率のほうが少し高い。それゆえに、女性有権者のニーズは、党の方針や候補者選びにも大きく反映される。党によっては候補者も当選する議員も女性のほうが多いこともある。

フィンランド人に女性議員が増えた理由を聞くと、「歴史の流れ」「優秀な人を選んだ結果」「教育の成果」といった声が返ってくる。バランスを保つために無理やり女性を増やしたといった経緯はない印象だ。党首や閣僚に女性が多いことについても、単純に実力と人気が評価された結果だと多くの人が捉えている。

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