妊娠中に大臣就任「政治家」も産育休取る国の凄み フィンランドでは誰もが当たり前に取得する

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話は少し前にさかのぼるが、私がフィンランドに留学した2000年は、ちょうど史上初の女性大統領タルヤ・ハロネンが就任した年であり、大学でも女子学生たちは女性大統領の誕生を誇らしげに語っていた。

ある友人が言うには、彼女や兄弟は女性候補者に投票したが、彼女の父親は女性を大統領にしたくないとの理由だけで対抗馬の男性候補者に投票していたという。まだまだ政治家の性別が話題や決定に大きな影響を与える時代だったといえる。

タルヤ・ハロネン大統領は就任当時シングルマザーで、子どもの父親とは別の男性と事実婚の関係にあった。そういった事実婚カップル自体は当時すでに珍しくはなかったが、国の代表としては前代未聞のことだった。

その後、2人は正式に入籍している。強さと個性を持ち、わが道を行き、あまり周りやメディアを気にせず外出する彼女の様子は、よくも悪くも注目を集めた。

「男性でも大統領になれるの?」

その後、私が留学中の2003年には女性のアンネリ・ヤーテンマキ首相も誕生、国のトップ2人が女性ということで騒がれた。さらに2010年には史上2人目の女性首相マリ・キビニエミも登場した。彼女は当時2人の幼い子どもを持つ母親で、かつ42歳ということで国内外の注目を集めたが、どちらの女性首相も在任期間は長くない。

それから10年以上が過ぎ、今では女性が党首や議長、大臣職などの要職に就くことも珍しくなくなった。「最近、目立つ女性の政治的リーダーって誰?」とフィンランドの友人たちや同僚に聞くと、いろいろな名前が出てくる。

15年ほど前であれば「タルヤ・ハロネン大統領」と誰もがいちばんに答えたが、「彼女はあくまでも歴史上に何人かいるキーパーソンの1人であって通過点でしかない。今はもっと多岐にわたっていろいろな女性リーダーがいる」というのが、友人たちの声だ。

それでも世界的に見て、目立つ存在といえばサンナ・マリン首相だろう。そして政権発足当時、連立与党を率いる5党の党首が全員女性で、そのうち4人が30代前半というのも大きな話題になった。

2020年9月にはそのうちの1人が交代したが、後を継いだ新たな党首も30代の女性だった。彼女たちは幼い頃から男女共働きの社会で育ち、政界にも周りにも女性のリーダーたちがすでに多く存在した世代だ。

しかも10代の多感な時期に初の女性大統領が誕生。続いて女性が首相になるのも見ている。女性が国のトップになることを自然に受け止めてきたはずだ。マリン首相もかつてインタビューで「憧れの政治家はいないが、ハロネン元大統領は確実に私たちの道しるべとなった存在」と語っている。

もっと若い世代だと、緑の党で今後が期待される20代の女性議員リーッカ・カルッピネンに至っては、物心ついたときには大統領は女性で、地元の首長も女性だった。そこで当時、父親に「男性でも大統領になれるの?」と聞いたと新聞インタビューで語っている。

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