土井善晴「料理に失敗なんて、ない」断言する真意 「一汁一菜」にこめた、料理するあなたへのエール

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2013年に和食がユネスコの無形文化遺産に登録されましたね。無形文化遺産に登録された和食というのは具体的に何かと言えば、日本の豊かな自然を背景とした素材の持ち味や暮らしの行事とともにあること、自然の移ろいが表現されていることで、それが登録の理由なんです。それって、まさに家庭料理のことなんですよ。

それなのになぜメディアは、名のある料理人にばかり取材に行って、日本の食文化を担ってきたお母さんやおばあちゃんには誰もマイクを向けないのでしょうか。今からでも遅くないですから、そういう人たちの話を聞いて応援し、励ましていくべきだと思います。

プロの料理と家庭料理の違い、和食とは何か、料理とは何か……人間はなぜ料理をするのか。料理を考えることで、人間を考えることになりました。そして、改めて、料理する行為の重要性を考えるようになりました。食事とは食べるだけではありません。料理して食べるのが食事です。

料理は愛であり、自分自身を守るもの

――著書の中に「料理することは愛することだ」とあって、こういう、料理の作り手と食べ手の関係性についての言葉が印象的でした。

料理は、自然と人間の間にあるのです。料理する人は、自然と人間、人間と人間の関係の間にいるのです。自然と人間の間に情緒が生まれる。そしてまた、これを誰かに食べさせようとするときには、自分と食べる人の間に情緒が生まれる。おいしいものをおいしく食べることは自然を敬うこと。料理することは食べる人を愛することです。一人暮らしでも自分で作って自分で食べることで、自分を大切にすることになります。

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高校で講演会をしたときに「家庭料理のない家もあるのだから、家庭料理の話をしないでくれ」と言った生徒がいました。現代は家族さえ信じられなくなっているんですね。そのときに私は、「ご飯を作ってもらえないなら、自分で作ればいい」と答えました。

どんな人でも、食事して食べるという行為がないと、安心して生きていけないのです。料理することは自立です。ご飯をたいて、味噌汁を作る。自分でご飯を作れることは自分を守ることになるでしょう。

星野 うずら レストランジャーナリスト

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ほしの うずら / Uzura Hoshino

出版社勤務のかたわら、アジアやヨーロッパなど海外のレストランを訪問。個人サイト「モダスパ+plus」やTwitter(@caille2006)で、「ミシュラン」「ゴ・エ・ミヨ」などガイドブックの解説記事やレストラン評を執筆。飲食専門のポータルサイトでシェフインタビュー連載中(飲食店.com)。Instagram(@photo_cuisinier)では、飲食に携わる人のポートレートを撮影している。
 

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