「日本のアニメ」と「CG」の幸福な出会い サンジゲン松浦裕暁社長の挑戦

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松浦 裕暁(まつうらひろあき)●福井県出身。サンジゲン/ウルトラスーパーピクチャーズ代表取締役。GONZOでCG制作を担当したのち、2006年3月、サンジゲン設立。様々な作品で3DCGプロデューサーを務め、リミテッドアニメーションという新しいアニメの表現を確立していく。2011年8月ウルトラスーパーピクチャーズ設立。クリエイティブとビジネスの両面から正しくものづくりをして市場を広げることの実現に向けて意欲的に取り組んでいる。

松浦:たどりついたのは、「手描きのアニメとCGのマッチング」。CGは放っておくとフルコマで全コマ動きがついてしまうんですけど、それを意図的にコマ数を減らして制限することで、「線で絵を描いて塗っていく」という日本のアニメらしさが出るようになったんですね。

そうすることで、日本のアニメの市場に向けたものをしっかり作れるようになる。視聴者も日本のアニメを見ている感覚を受けられるし、そうなることで、子供のころからすり込まれているアニメ魂にしっかりリンクされ、ちゃんと内容に入ってもらえるんです。

上田:「日本のアニメ」として受け入れられることを計算した上での3DCGということですか。

松浦:そういうことですね。それを僕たちは目指す。本来誰でもできるんだけど、CGを作っている人たちは誰もしていなかったので、ならば気づいた僕たちがやろうと。そして、だんだんと仕事も増えてきて仲間も集まってきたので、法人化しましょうと。

もともとは、漢字の「三次元」でフリーランスの集団だったんですけど、それをカタカナに変えて法人化したんです。カタカナに変えたのは、海外を視野に入れたときに漢字の「三次元」だと「スリーディメンションズ」になってしまうので、そうじゃなく「サンジゲン」という言葉で認識してくれたらうれしいなと思ってカタカナの「サンジゲン」、アルファベットの「SANZIGEN」にしました。

公開時には受け入れられるかびくびくしていた

上田:3DCGは、たとえば2012年の『ガールズ&パンツァー』に見られる「戦車と美少女」の組み合わせのような、ヒットの定番である「メカと美少女」というテーマに向いていて、非常に面白いなと思いました。エヴァンゲリオンの庵野監督も「アニメファンの永遠のポピュラリティはメカと美少女」とおっしゃっていますが、そういう意味で戦艦を擬人化した美少女が登場する『蒼き鋼のアルペジオ』という作品をフル3DCGアニメーションでされたというところに感銘を受けました。

松浦:2013年に放送した『アルペジオ』に関しては、僕がこういう作品をやりたいと言ってやったわけではありません。むしろ逆で、クライアントさん側から「CGでできますか」というオファーがあったんです。とにかくいち早くテレビシリーズをCGでやりたかったので、内容はよくわからない状態で飛びつきました。メカと美少女で、さらに人間にしか見えないけど、人間じゃない。今思うと、そういうところも、CGに向いていたのかもしれませんね。

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上田:見ていて3DCGのよさを最大限に活かした作品だと思いました。特に、メカなどの無機質で冷たい表現って3DCGは得意じゃないですか。それとともに、柔らかさとか温かみとか、そういうところをヒロインが成長するに従ってどんどん入れ込んでいって、最後には全く別物のように動く。そういうプロセスを見ていて、“いわゆる3DCGってこういうものだよね”という予想をはるかに越えた魅力が生まれたと思います。

松浦:公開したときは、うちのスタッフも含めてびくびくしていました。本当に受け入れられるのかと。やはりネガティブな意見もありましたが、僕たちが描くアニメの未来を実現させるためにはそれも含めてやらないといけないと思っていました。3話、4話と進んでいくうちに、もう誰もCGがどうとかそんな話をしなくなって内容の話に変わっていったのは、非常にうれしかったですね。

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