「日本のアニメ」と「CG」の幸福な出会い サンジゲン松浦裕暁社長の挑戦
上田:『アルペジオ』は、フル3DCG初のテレビシリーズという前代未門の挑戦でした。そういう意味だと、マネジメントの部分でも苦労はあったのではないでしょうか。
松浦:はい。そもそも赤字になると思っていたので。売り上げを取らなければいけないから、ほかの仕事もありましたし。これまでも、今でもそうなんですけど、体制としては「僕」「以下全員」なんですよ、やっぱり。僕が「こうだ」って言って、そこに仕事がおりてきてみんなでやる。でも、新しいことをやるには「これは、僕の仕事じゃない」とか言ってセクショナリズムに陥っていたら成長が遅くなるので、そこはすごく気をつけていました。
上田:最少人数で、スタッフも成長させつつ、スタジオのブランディングを保ちつつ、作品を製作していくという矛盾を抱えながらやっていくわけで。
松浦:そうですね、全部矛盾しています(笑)でも、赤字を生んでも別にかまわないと思うんですよ。そこに納得まではいかないまでも、理解できる理由があればあとで挽回できると思っているので、それを求めています。
上田:赤字を嫌ってリスクを取らないというのではなくて、赤字になってもいいからリスクは取るけれども、取って、その理由を明らかにしようと。
松浦:そうです。理由をわかった上でしないとほとんどのことは失敗しますから(笑)。 それでもいいと思う理由をもってやらないといけないですよね。もちろん無駄なリスクは背負う必要はないのですが、必要なリスクは背負います。
『アナ雪』のように世界を相手にした作品を作りたい
上田:最近、3DCGの映画というと、わりとディズニーとかピクサーとかいうイメージがついてきていると思うのですが、『アナと雪の女王』や、最近だと『ベイマックス』など、世界で話題を集めている作品についてはどのように見えていますか。恐らく膨大な予算や時間をかけて彼らは作っていると思うのですけれども。
松浦:どういう画(え)にするかは置いておいて、作りたいと思ってます。やっぱり『アナと雪の女王』なんかも500億円、600億円のビジネスで、50億円くらい利益出ればいいかなというビジネスモデルじゃないですか。それはやはり、世界市場じゃないとできないと思います。
日本だと、成功していると言われるものでも、数十億程度の規模ですよ。日本ではすごく盛り上がっていても、世界に行ったら、ほぼ空気のような……。それは僕たちが作っている作品も同じで、市場を大きく広げないといけないと思っています。だから、『アナ雪』みたいな世界市場向けのアニメーションというのももちろん注目していますし、今は海外とも一緒にやろうとしています。海外の原作を輸入するのではなくて、一緒に作る、ということが世界市場に向けて作るある種の条件だと考えているからです。
たとえば米国のシナリオライターと世界向けの話を書ける人と僕たちで原作を一緒に開発するというようなことですね。アニメーション製作は僕たちがやるのは全然かまわないですけど、そうすることが必要かなと思っていて、徐々に動き始めています。
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