問題解決が苦手な人は「因数分解」をわかってない 答えを得るための作業にしては何も得られない

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もしこれを「答えを導くための作業」と思ってしまうと、学習者にはそれ以上に得るものはありません。

しかし、この行為の“意味”を知り、それが日常生活において使われていると理解できれば、それは一生モノの武器になるはずです。

「因数分解」とは、構成要素を明らかにし関連付ける行為です。例えば先ほどの例であれば、「18=2×3×3」という数式は、「18という数は2と3と3という数によって構成され、それらは掛け算(×)で関連づけられている」という文章に変換できます。

つまり構成要素を明らかにして関連付ける行為こそ、因数分解の“意味”なのです。もしこのことがわかっていれば、冒頭の「ちゃんと因数分解して考えなさい」という言葉の意味もすぐにわかるはずですし、日常生活のさまざまな場面で役立つこともご理解いただけるでしょう。

「信頼」を因数分解してみると?

例えばビジネスパーソンが「上司から信頼されていない」という問題を解決したいとします。解決するために具体的に何をすべきかを明らかにできる人は、そもそも「信頼」というものがどのような要素がどう関連づけられて決まるものかを考えるでしょう。極めてシンプルな回答例として、次のような引き算の表現ができるかもしれません。

さらにそれぞれの要素を具体的にし、もっと細かい要素に分けることができるのであればそれを続けていきます。このような因数分解をした結果、次のような表現ができます。

 

信頼を高めるものは何よりも仕事で成果であること。逆に信頼を損なうものは上司への態度の悪さとコミュニケーション不足。前者は増やす(高める)ものであり、後者は減らす(改善する)ものとなります。それぞれ増やす(減らす)ためには何をどうするのかを考えることこそ、まさにビジネスパーソンに必要な問題解決力にほかなりません。

私はこれを「因数分解思考」と呼び、企業向けの研修やビジネス書などでトレーニングを提供しています。

ところで、因数分解思考は四則演算(+−×÷)を使います。ならば当然、これらの“意味”も理解してほしいと思います。

大きくは「分ける」と「比べる」という2つの視点があります。「分ける」には分解と分類の2種類あり、それぞれ「×」と「+」の意味があります。例えば会社の売上を分解、あるいは分類するなら次のようなものが考えられます。

分解:売上=(単価)×(客数)
分類:売上=(新作商品の売上)+(既存商品の売上)
次ページ一方、「比べる」ということは
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