問題解決が苦手な人は「因数分解」をわかってない 答えを得るための作業にしては何も得られない

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一方、「比べる」には大小と割合の2種類があり、それぞれ「−」と「÷」の意味があります。量で考える場合は大小の比較になるので「−」を使い、質で考える場合は割合(比率)で表現することになるので「÷」を使います。例えば営利益率という数字は次のように因数分解できます。

利益率=(利益)÷(売上)=(売上−費用)÷(売上)

利益率というものは利益と売上の2要素で構成され、それらを使って質を表現するものになるので「÷」で関連づけます。さらに利益とは売上と費用の2要素の大小を比較することによって決まるものなので「−」を使って関連づけます。

整理すると、次のようになります。

 

四則演算を使ってできる思考

私たちは四則演算を使ってこのように表現することで、「売上を上げるためには?」や「利益率を上げるためには?」という問題の答えを導きます。あまりに当たり前すぎて自覚的になれないかもしれませんが、私たちが日々行っている問題解決とは、例外なくこのような思考を使ってするものなのです。このような思考とは、次のプロセスのことです。

STEP1 解決したいことがある

STEP2 因数分解するテーマを決める

STEP3 それはどんな要素がどのように関連づけられているかを明らかにする

STEP4 それらの要素のうちどれを増やす(高める)か、どれを減らす(改善する)かを明らかにする

私の経験上、STEP2までは誰でも進むことができます。

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ところが、STEP3になった途端に多くの人が思考停止し、「うーん」「難しいなぁ」「何をどう考えたらいいのか?」となってしまいます。明らかに肝はここであり、そしてこのSTEP3は私たちが学生時代に算数や数学の授業で訓練しているはずなのです。かつて学んだ行為が、いま必要な行為に接続されていない。私はこの問題こそ、解決すべきことだと思っています。

みなさんにも私と同じように解決したい問題がきっとあることでしょう。ビジネスは、いいえ人生は、問題解決の連続です。しかし、解決したい問題を目の前にただ「う〜ん」と唸っているだけではいつまで経っても解決しません。ご紹介したような因数分解を身体が(脳が)すぐに始めてくれるかどうかが重要です。

今からでも遅くありません。数学の問題を解くのではなく人生の問題を解くために、私の提唱するビジネス数学の世界を少しだけ覗いてみてはいかがでしょうか。

深沢 真太郎 BMコンサルティング代表取締役、ビジネス数学教育家

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ふかさわ しんたろう / Shintaro Fukasawa

一般社団法人日本ビジネス数学協会代表理事。ビジネス数学を提唱する人材教育のプロフェショナル。公益財団法人日本数学検定協会主催「ビジネス数学検定」1級(AAA)は日本最上位。これまでに指導した人数は、延べ7000人。「ビジネス数学」の第一人者として確固たる地位を築く。企業研修のほか学生やプロスポーツ選手などの教育研修にも登壇。数学的な人材の育成に力を入れている。著書に『「仕事」に使える数学』(ダイヤモンド社)、『数学女子智香が教える 仕事で数字を使うって、こういうことです。』(日本実業出版社)など。2018年には小説家としてデビュー作『論理ガール』(実務教育出版)を上梓。

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