最も大きかったのは、2004~2006年にかけて進められた小泉内閣の「三位一体改革」だ。「国庫補助負担金改革」「税源移譲」「地方交付税の見直し」の三つを一体として進められたこの改革では、「4兆円分程度の国庫補助負担金の廃止・縮減」が方針として掲げられ、その標的とされたのが義務教育費国庫負担金であった。
それ以前、公立学校教員の給与は、国と都道府県が2分の1ずつ負担していたが、国の負担割合が3分の1に減らされたのだ。残りの3分の2は、地方交付税交付金や税源移譲によって賄われるという理屈だが、実際にその財源が保障されるわけではない。結果として各自治体の教育財政の基盤は、極めて脆弱なものとなった。
そもそも正規教員の長期的採用計画を立てるのは、どの自治体にとっても容易なものではない。20代前半の教員を採用すれば、40年近くにもわたって雇用することになるが、その頃にどのくらいの数の学齢児童生徒がいるか、予測するのが難しいからだ。
もし、急激な少子化によって教員が余るようなことがあっても、正規教員をリストラすることはできない。そのため一定数を非正規で雇い、いざという時のための「調整弁」としている側面がある。
教員給与も自由に設定できるように
「三位一体改革」によって義務教育費国庫負担金の割合が3分の1になったことで、どの自治体もより慎重に採用計画を立てるようになった。そして、ここを一つの分水嶺として、多くの自治体が非正規教員の割合を増やし始めた。
実際、東京都が「期限付任用教員」という非正規雇用の制度を設けたのは2006年度。これは義務教育費国庫負担金の割合が3分の1に下げられたタイミングと一致している。
時を同じくして、2つの大きな制度改正があった。
1つは2004度に義務教育費国庫負担制度に導入された「総額裁量制」だ。総額裁量制とは、国が支払う負担金の総額を超えない範囲で、各都道府県や政令指定都市が給与額や教員配置を自由に決められるというものだ。
無料会員登録はこちら
ログインはこちら