――発達障害が学校現場で問題となるようになった背景は?
教育現場で「発達障害」が問題になったきっかけは、2つあります。
1つは、1998年から問題となった「学級崩壊」。当時は1997年の山一証券倒産に象徴されるように、深刻な経済不況の時代でした。昔は「学級の荒れ」と言われていたものが、経済崩壊の比喩として学級崩壊と呼ばれ、「キレる子ども」が増えていると報道されるようになりました。
もう1つは、1990年から2000年代にかけての少年犯罪の多発です。子どもが加害者・被害者となった「凶悪」と呼ばれる少年犯罪が起こりました。こうした学級崩壊と少年犯罪事件の原因として、発達障害が指摘されるようになりました。
この時期は、教師の指導力不足や母親のしつけが問題視されていた頃でもあります。発達障害、つまり「脳機能の障害」が原因だとされたことは、教師や親からしても、ある意味ほっとする都合の良い事実だったとも言えます。
「脳の障害」は仮説に過ぎない
――2004年に成立した発達障害者支援法では、発達障害は「脳機能の障害」と定義されていますね。
発達障害は個々の診断で脳を調べるわけではなく、子どもの行動の現れを医師が聞き取りをして、その行動について診断名をつけています。脳に何らかの機能障害があるというのは仮説であり、環境的な要因による障害と定義すべきだという医師もいます。
ところが、法律で「脳機能の障害」と定義されたことと、学級崩壊や少年犯罪というセンセーショナルな話題が結びついたことで、一気に発達障害が浸透していきました。
無料会員登録はこちら
ログインはこちら