「発達障害」増加の裏で教師の休職続出が止まない 精神疾患の休職者は1990年から20年間で5倍に

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2014年に日本が批准した障害者権利条約は、障害のあるなしにかかわらず、地域の学校で共に学ぶことをうたっています。こうした「インクルーシブ(包摂的な)教育」への転換を迫られていますが、特別支援学級は事実上の分離教育となっています。

国連のインクルーシブ教育は障害だけでなく、性差や民族差、能力差など、あらゆる子どもの包摂を目指しています。その中には天才児も含まれます。しかし、日本のインクルーシブ教育は障害だけに限定され、障害の軽減や克服に矮小化されています。

障害名ではなく、その子が何で困っているのか。それをよく観察して、みんなでその子が過ごしやすい環境をどうやったら工夫できるか。そうした視点が欠けています。

マイノリティが発達障害と疑われる

――日本の学校では、貧困家庭や外国人の子どもは発達障害とされる割合が多いというデータもありますね。

文化的、社会的資源が不足していると、学校の中では特異に見えます。マジョリティ(大多数)の子どもと違う行動をするマイノリティ(少数派)の子どもが、発達障害と疑われやすいのです。

例えば、貧困の家庭の場合、家庭で十分なコミュニケーションがないとか、深刻な家庭の問題がある場合でも、十分に発達していないという問題と取られてしまうケースもあります。

東洋経済オンラインの連載「精神医療を問う」を書籍化。発達障害の問題も広く取り上げている。『ルポ・収容所列島』(書影をクリックすると、アマゾンのサイトにジャンプします。紙版はこちら、電子版はこちら。楽天サイトの紙版はこちら、電子版はこちら

外国人児童については、特別な指導として日本語指導を入れていることもあります。ただ、その子がいると授業がうまく進まないなど、教師側から見ると特別支援学級を勧めるいろいろな条件があり得ます。外国人の場合、「学校とはどういう場なのか」という文化的な理解が違うこともあります。こうしたマイノリティの子どもたちの単なる「特徴」が、障害と結びつけられてしまうこともあります。

「発達障害」として見ることは、異文化や多様性の排除にもつながります。さまざまな論理が組み合わさる中で、何も悪くない子どもが排除されています。しかし、これは大人の都合です。教師は何かあると医師に丸投げし、善意の中で診断や投薬、特別支援学級へと切り捨てられていると見ることも可能です。

学校では、マジョリティの人が当たり前だと思っている授業のやり方や慣習が、マイノリティの子どもの生きづらさになっています。そうした子が過ごしやすくなるよう、学校の文化や慣習を変えていく必要があります。

【情報提供のお願い】東洋経済では、発達障害に関連する課題を継続的に取り上げています。こちらのフォームへ、情報提供をお待ちしております。
井艸 恵美 東洋経済 記者

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いぐさ えみ / Emi Igusa

群馬県生まれ。上智大学大学院文学研究科修了。実用ムック編集などを経て、2018年に東洋経済新報社入社。『週刊東洋経済』編集部を経て2020年から調査報道部記者。

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