横浜中華街「聘珍樓」破産が象徴する飲食店の苦難 コロナ禍で飲食業めぐる経営環境はどうなったか

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老舗の名店も多い横浜中華街。コロナ禍で一時は客足が大きく遠のいた(写真:t.sakai/PIXTA)
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新型コロナウイルス感染症の流行が落ち着き、コロナ前に社会が戻ろうとするなか、コロナ禍における経済活動のさまざまな制約が爪痕を残している。とくに旅行業や飲食店へのダメージはやはり大きい。

そんな中で象徴的なニュースが飛び込んできた。横浜中華街の中華料理店「聘珍樓横濱本店」等を経営していた株式会社聘珍樓が破産手続きを開始することになった。負債の総額は3億500万円ほどだという。

移転を目指すと思われていたが

同店は先の5月に閉店としており、移転を目指すと思われていた。さらに移転を理由とした閉店について同社は計画どおりとしていたが、その時点でかなわない移転だと思っていたのかもしれない。運営の同社の張り紙によると「令和4年6月2日(木)午前10時、横浜地方裁判所において破産手続開始決定がなされ」と背景を説明している。「聘珍樓横濱本店」以外は、もともと別の法人が運営している。原稿執筆時点の6月2日夜の時点では同店のホームページにはアクセスができなかった。

なお同店に私は一度しか訪問したことはないが、横浜中華街の有名店で100年以上の歴史を持つ。歴代の料理長は有名で名実ともに代表店としての立場だった。

いわゆる倒産とは法律用語ではなく俗語といえる。今回は、再建型の民事再生法(経営陣が残って再建を模索)や会社更生法(新たな経営陣で再建を目指す)ものではなく、清算型の破産だから同社は消えゆく運命にある。

もっとも同社はコロナ禍前から不採算に陥ったり、特別清算の決定を受けたりしている。コロナ禍だけを原因とするのはやや早計かもしれない。ただし同店の撤退は、どこか時代の運命に翻弄されたように感じるのだ。

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