小林薫×阪本順治「リスクしかない仕事をする訳」 清廉潔白だけではない人生を生きて思うこと

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――そうやって俳優さんを心の中で決めて脚本を書いたものの、スケジュールなどの都合でお断りされた場合は?

阪本:脚本ごと直します。ぜんぜん違う話になってしまうので。もし今回、『冬薔薇』で小林さんにお断りされていたら、根本から考え直していたでしょうね。

ですが、小林さんには脚本を書く前にスケジュールを聞いていた気がします。

小林:脚本が未完成で、あらすじしかできていない段階だったような。

阪本:先押さえですよね。スケジュールのみの確認は、俳優さんにとっては失礼な話なのですが、小林さんにもあえて事前におうかがいしました。

阪本 順治 /1958年10月1日生まれ、大阪府出身。大学在学中より石井聰亙(現:岳龍)監督、井筒和幸監督などの現場にスタッフとして参加。89年、赤井英和主演『どついたるねん』で監督デビュー。多くの映画賞を受賞する。藤山直美を主演に迎えた『顔』(00)では、日本アカデミー賞最優秀監督賞、キネマ旬報日本映画ベスト・テン1位など主要映画賞を総なめにした。以降もハードボイルドな群像劇から歴史もの、喜劇、SFまで幅広いジャンルで活躍。その他の主な作品に『傷だらけの天使』(97)、『新・仁義なき戦い。』(00)、『KT』(02)、『亡国のイージス』(05)、『魂萌え!』(07)、『闇の子供たち』(08)、『座頭市THE LAST』(10)、『大鹿村騒動記』(11)、『北のカナリアたち』(12)、『人類資金』(13)、『団地』(16)、『エルネスト』(17)、『半世界』(19)、『一度も撃ってません』(20)、『弟とアンドロイドと僕』(22)などがある(撮影:梅谷秀司)

――作品になぞらえたお話も。作中ではいびつな親子関係が描かれていますが、お二人のご両親との関係を教えていただけますか。

阪本:僕は祖父が仏師(仏像の彫刻師)で、後に小売に転じて祖父は仏壇商になりました。自分が三代目になるはずでしたが、継がずに映画監督になりました。昭和の商いは、朝7時か8時頃から店を開けて、夜9時ぐらいまでシャッターを下ろさないんです。ずっと仕事中だから、両親との会話は普段ほぼないわけです。話すとして(大阪府出身なので)会話は阪神(タイガース)が勝ったか、負けたぐらい。

祖父母と晩飯を食べて、風呂に入って寝る、みたいな生活を送っていました。おふくろとは少しコミュニケーションは図っていましたが、親父とはあまり語り合うことがなく。

親父は小林さんが演じた義一と似ていて、叱り方がわかっていなかった気がします。で、「子どもに嫌われたくないんだろうな」という思いを感じ取っていました。おふくろに叱らせて、自分は「まあまあ」とフォローに回るというか。

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