小林薫×阪本順治「リスクしかない仕事をする訳」 清廉潔白だけではない人生を生きて思うこと
――そうやって俳優さんを心の中で決めて脚本を書いたものの、スケジュールなどの都合でお断りされた場合は?
阪本:脚本ごと直します。ぜんぜん違う話になってしまうので。もし今回、『冬薔薇』で小林さんにお断りされていたら、根本から考え直していたでしょうね。
ですが、小林さんには脚本を書く前にスケジュールを聞いていた気がします。
小林:脚本が未完成で、あらすじしかできていない段階だったような。
阪本:先押さえですよね。スケジュールのみの確認は、俳優さんにとっては失礼な話なのですが、小林さんにもあえて事前におうかがいしました。
――作品になぞらえたお話も。作中ではいびつな親子関係が描かれていますが、お二人のご両親との関係を教えていただけますか。
阪本:僕は祖父が仏師(仏像の彫刻師)で、後に小売に転じて祖父は仏壇商になりました。自分が三代目になるはずでしたが、継がずに映画監督になりました。昭和の商いは、朝7時か8時頃から店を開けて、夜9時ぐらいまでシャッターを下ろさないんです。ずっと仕事中だから、両親との会話は普段ほぼないわけです。話すとして(大阪府出身なので)会話は阪神(タイガース)が勝ったか、負けたぐらい。
祖父母と晩飯を食べて、風呂に入って寝る、みたいな生活を送っていました。おふくろとは少しコミュニケーションは図っていましたが、親父とはあまり語り合うことがなく。
親父は小林さんが演じた義一と似ていて、叱り方がわかっていなかった気がします。で、「子どもに嫌われたくないんだろうな」という思いを感じ取っていました。おふくろに叱らせて、自分は「まあまあ」とフォローに回るというか。
無料会員登録はこちら
ログインはこちら