小林薫×阪本順治「リスクしかない仕事をする訳」 清廉潔白だけではない人生を生きて思うこと
犯した過ちがいつか許容される社会になっているか
――小林さんは、主演の伊藤健太郎さん演じる淳の父親、義一の役です。伊藤さんは阪本監督と初めて2人きりで打ち合わせをしたときに、「今の自分と仕事をしてもリスクしかないと思うんですが」と語っていたそうです。小林さんがオファーをいただいたときの感想は。
小林薫(以下、小林):この作品にキャスティングされたことは、おもしろいと感じました。同業者などが叩かれているのを見ていて、人生で何か過ちをおかしたときに、いつかは許容される社会ではないと生きるのがキツイと思っていたんです。自分にもいつか、そんなお鉢が回ってくるかもしれませんし。
30代、40代の頃、失敗ばかりしてきましたが、どこかで許された。許されてはいないのかもしれませんが、許容されてきたわけです。
もちろん、反省はしなければなりません。当然ですが、一方で今のような世の中は、はたして住みやすいのか、生きやすいのか。考えていたときのオファーだったので、そのキャスティングに心惹かれました。
――たしかに、清廉潔白のみの人生を送ってきたか? と問われたら、胸を張って「はい」と答えられる人は、そう多くはないかと。
小林:この映画をご覧になってもわかると思います。伊藤くんが演じた淳や、僕が演じた義一の生き様を観れば、ね。
『冬薔薇』に出てくる登場人物も、「自分の人生はまったくうまくいっていない。現実では何もいいことがない。なぜ自分ばかりがこんな目に遭うのか。アイツは許されているのに」と考え詰めたりするわけです。
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