
政策保有株式をめぐって、新たな論点が浮上している。上場企業が政策株の売却に前向きになる中、「売られる側」が拒否反応を示していることだ。
政策株を手放そうとする上場企業に対して圧力をかけ、売却を阻止する動きまで出ている。持ち合い解消の岩盤として立ちはだかる「売らせない圧力」の動向を、金融庁も注視している。
政策株の売却を「阻止」
「当社の株を売るなら、今ある借り入れをすべて返済します」。ある地方銀行の担当者は、取引先の小売店からこう告げられたという。
その地銀はまさに、政策株の縮減に動いていたところだった。売却にあたって先方の同意は必要ないものの、その小売店は長年の取引先かつ、地元経済での存在感も大きい。摩擦を避けるため、あらかじめ売却の必要性を説いて納得を得ようとした矢先だった。
先方から返ってきたのは売却を躊躇させるような言葉だった。大口の融資先であり、他の金融機関に借り換えられるのは避けたい。結局、その企業の株式売却を見送った。
発行体にとって、政策株が売られることは安定株主を失うことと同義だ。アクティビスト(モノ言う株主)が存在感を高める中、与党株主を慰留しようと、一部の企業は取引関係をちらつかせ、売却を思いとどまらせようとする。政策株を売る側は理解を得られた銘柄を優先して売却し、交渉が難航する銘柄はひとまず棚上げにする。
そうした状況は政策株のデータからもにじむ。東洋経済が全上場企業の売却状況を調査したところ、保険会社や銀行を中心に、直近1年間で多額の政策株が売却ないし純投資目的に振り替えられていた。一見すると縮減が順調に進んでいるように映る。
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