今なぜ?コロナ世代の「女性運動」が共感呼ぶ理由 従来と違う「やさしいこぶしの振り上げ方」

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2019年10月、消費税が10%に跳ね上がり、谷口らは「#みんなの生理」を立ち上げて生理用品に軽減税率を求めるインターネット署名を始めた。

翌年の2月、新型コロナの感染が急拡大し、アルバイトは激減した。谷口らが2021年2月から5月にかけ、10代から20代を中心に行ったSNS調査では、金銭的理由で生理用品を買えなかった人は5.9%、買うのに苦労した人が5人に1人に上った。生理用品を交換する頻度を減らしたり、ティッシュで代替したりする人もいた。

「生理の貧困」は海外でも問題化していた。韓国では、生理用品を買えず靴の中敷きを使用している女性の存在が報じられ、2016年、低所得層への生理用品購入に月1000円程度のバウチャーが支給されることになった。英国では生理のある14歳から21歳の3人に1人が、ロックダウン下で生理用品の入手に苦労していると報じられ、2021年から生理用品にかける税が撤廃された。

調査をもとに議員などに働きかけ、NHKなどもその動きを取り上げた。あまりにも基礎的な物資を買えない人々の存在は社会に衝撃を与え、生理用品を無償配布など「生理の貧困」対策に取り組む自治体は、581にのぼった(2021年7月20日時点の内閣府調査)。

「生理用品の無償配布が広がったのはうれしい」と谷口は言う。「でも、背景にある女性の低賃金や、生理について口にしにくい状況の問い直しには、十分たどりつけていない。それが今後の課題です」

海外就職の道を絶たれて気づいた「日本の貧困」

田所真理子ジェイも、1996年生まれの「コロナ世代」だ。小学生のとき、日本人の父と死別し、フィリピン人の母と暮らしてきた。

母が海外出身であることから途上国の貧困問題に取り組みたいと思うようになり、2019年にメキシコに留学した。だが翌年、コロナの感染が拡大して帰国を余儀なくされ、メキシコでの就職の道は絶たれた。

日本で就職活動をしながらの「ステイホーム」の日々は、進路や生き方を自問する時間を生んだ。ニュースで女性の非正規の大量失業や外国人労働者、エッセンシャルワーカーの苦境を知った。足元の日本の貧困の実態を知らなかった自分を突き付けられた。

何かできることはないかと参加したのが、若者労働NPO「POSSE(ポッセ)」のボランティアだった。妊娠したら帰国させられる外国人技能実習生の問題に取り組み、コロナ禍で住宅を失う人々を支援する「家があってあたりまえでしょプロジェクト」にもかかわった。

女性の活躍度の低さが問われる日本で、女性の留学生は全体の6割(日本学生支援機構2019年調査)を占める。コロナ禍は、そんな若い女性の目を国内へ引き戻した。「日本でできることに限界を感じ、海外で力を生かしたいと思う若者は多いのでは。でも、日本で社会を変えるためにできることがある。活動を通じ、それを発信していきたい」と田所は言う。

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