──日本人のITの使いこなしにも切歯扼腕しているようですね。
日本はITを使いこなさなくても困らないものを進化させた。ファクシミリだ。今でも中小企業では受発注は手書き利用のファックスが少なくない。カルテや保険点数計算の電子化はようやく動き出したが、キーボードを使わない方式が根強い。これはトータルではものすごく非効率だ。それが、ITインフラは世界最高水準なのに、使う能力は先進国水準に追いついていない理由だ。
キーボードを操作する能力は、まだ今後10~15年必要だろう。ITを使いこなし、かつ楽しんでいこうとすると、プログラミングできる能力がないと面白さがわからない。日本はITインフラが後れているのではなくて、使い方だけが問題なのだから、頑張ればここで新たなコストがかかることはない。
プログラミングでおもちゃ遊びを楽しめ
──今はプログラミングでおもちゃ遊びですか。
われわれの世代はおもちゃを手作りした。それは面白かったし、そういうものをきっかけにエレクトロニクスの世界に飛び込んだり、機械をやってみたりする人間が出てきた。今プログラミングという世界がまさに同じような状態に入っている。いじくり回すと、すごく面白いことができる。欧米はそれに気づいて一般教科として始めている。ずいぶん違う世界があると思えてくる。
──さらに日本が付加価値をつけるにはどうすべきですか。
次の稼ぎ頭というと、グローバルな展開の産業の話ばかりが出てくるが、国内での付加価値増強の議論をしないと豊かさは実感しにくい。人口減少に比例して、単純に内需は縮小すると皆思っているようだが、マーケット規模で見ると、けっこう拡大に出遅れているものがある。中でも住宅と教育だ。住宅はマーケットの構造がガラッと変わり、中古売買の回転率が上がることで規模として大きくなる可能性が大いにあるし、教育のマーケットは社会人以降がポイントだ。
たとえば住宅は住み替えたいときに売って、自分に合った家に買い替える。人生ステージに応じて中古住宅の売り買いが増える方向に行くだろう。手をかけただけ家の値段が上がるなら、家を大事に使ってしっかりメンテするようになる。一方の教育は従来の社内教育が外部化する。今やサービス業が増えて、社内教育は減る一方だ。だが、教育費をかけてでも生産性を上げていかないと勝てない。人材投資で個人の付加価値を上げる。そういう未来志向が普及するだろう。
──となると、日本人の付加価値アップの公式はどうなりますか。
日本人の「一人ひとり」の付加価値を上げる公式としては、「日本文化のブランド価値を最大化」「ITを使いこなし日本人機能最大化」「国内に残る付加価値最大化」の3要素を掛けたものが、稼げる日本の姿だ。
記事をマイページに保存
できます。
無料会員登録はこちら
ログインはこちら
印刷ページの表示はログインが必要です。
無料会員登録はこちら
ログインはこちら
無料会員登録はこちら
ログインはこちら