多様な社員の活用が競争力アップにつながっていく 企業パフォーマンスを上げるためのダイバーシティ・マネジメント④
最終回の今回はダイバーシティの実際のメリットをご紹介し、今後、日本企業はなぜダイバーシティを進めていかなければならないかについてもご説明していく。
米国で企業がダイバーシティのメリットを認識した要因の1つは、多様な人材を適切に活用することにより、業績向上につながった成功事例が次々に出てきたからだった。ある企業はスペイン系住民が多く住む地域に、スペイン語を話せるスペイン系社員に営業を担当させたところ、売り上げが大きく伸びた。また、中国系顧客が多い店舗に中国系社員を登用し、業績を向上させた例もある。
こうした事例のようにダイバーシティ推進による企業への恩恵は、多様で優秀な人材の「活用」によってもたらされる。単に採用し定着させることだけがダイバーシティの目的ではない。企業は多様な顧客のニーズへ効果的に対応できるよう、多様な社員の最適な活用法を考えることで、競争力アップへつなげることができるのである。
人種の多様性が進む米国とは違い、日本ではダイバーシティの重要な属性の1つとして考えられているのが「雇用形態」である。現在、日本の雇用者の3人に1人が非正規社員。女性では55%にも上る。
一般的に「ダイバーシティ=女性活用」の中で想定される「女性対男性」の図式ではない。むしろ女性社員の間で、「正規対非正規」という雇用形態の「違い」による摩擦が生まれる場合があるのだ。
たとえば、契約社員が「正社員が私を派遣さんと呼ぶ」と不満を漏らし、仕事への意欲を低下させることが多々ある。しかし、スーパーのような業界では7~8割がパート社員だ。そのためパート社員のやる気と能力を引き出すことは「競争に勝ち残るうえで不可欠」となる。
ある地方の中堅スーパーは、パート社員と正社員に共通の評価制度を導入し、店長になる資格も取得できる仕組みに変え、パート社員の能力開発にも取り組んだ。その結果、パート社員の意欲と能力が高まり、優秀なパート社員から店長も誕生し、スーパーの全体的な業績を上げている。
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