今の若者が「とにかく差がつく状況が苦手」な理由 横並び主義が生む完全一律な平等分配思考

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現在の大学生が思う最も公正な分配方法

これだけでも興味深いテーマとデータだが、もちろん議論には続きがある。と言うか、これからが本題である。

実は筆者も大学生を対象としてデータを取ってきた。データは2018年12月から2020年11月までの間で複数回にわたり収集した(対象者:複数の大学における2~4年生および大学院1年生:211名)。

その結果はこうだ。

① 平等分配:男性49.0%、女性53.2%
② 必要性分配:男性5.9%、 女性5.5%
③ 実績に応じた分配:男性19.6%、女性16.5%
④ 努力に応じた分配:男性25.5%、女性24.8%

正直、私はこの結果を見てとても驚いた。若者のモチベーション研究をしている筆者が驚くのだからよっぽどだ。

何よりもまず、前項で紹介した日本人全体の結果と大きく異なることは一目瞭然である。その中でも最も目を引くのが、①平等分配の多さだ。ずばり、現在の大学生の半数は、単純な均一分配が最も公正だと考えていることになる。今の若者の間では、いかなる理由にかかわらず、分配量を変えること自体に違和感を持つ人が増えているのだ。

その分、残りの3つが票を減らしている。

特に着目したいポイントは2つある。確認しておくが、最初に紹介したSSM調査は対象が全世代にわたっていること、調査時期が1990年代であることの2点において筆者の調査とは異なる。その全世代調査で2番目に票数が少なかった②必要性分配が、若者ではさらにシェアを落とす結果となった。これがポイントの1つ目である。

必要性分配は先に述べたとおり、実績や努力にかかわらず、今それが必要だと思われる人に多く施すという考えだ。捉え方によるが、困っている人に多く配分するという意味において、一般的には最も人間味のある分配方法だと言えるだろう。それを、今の大学生の多くは選択しない。

ポイントの2つ目は、④努力に応じた分配が大きく票を落としていることだ。最初のSSM調査で(③実績分配ではなく)④努力分配が最多というのはいかにも日本人らしい、と思った方は多かったのではないだろうか。しかし大学生の間では、その割合が半減している。

いい子症候群の特徴である「とにかく差がつく状況が苦手」とは、言い換えれば究極の横並び主義であり、それが顕在化した象徴形が完全一律な平等分配なのだ。

さて、冒頭のケーキを切り分ける話はその後どうなったか。

いかにしてきっちり11等分するかで四苦八苦している学生に、筆者はこう言う。

「先生は偉いからふたり分ね」

おっと、これで12等分して、そのうちの2ピースを先生に渡せばいいではないか! 先生、まさに神!! 

金間 大介 金沢大学融合研究域融合科学系教授、東京大学未来ビジョン研究センター客員教授

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かなま だいすけ / Daisuke Kanama

北海道生まれ。横浜国立大学大学院工学研究科物理情報工学専攻(博士)、バージニア工科大学大学院、新エネルギー・産業技術総合開発機構(NEDO)、文部科学省科学技術・学術政策研究所、北海道情報大学准教授、 東京農業大学准教授、金沢大学人間社会研究域経済学経営学系准教授、2021年より現職。主な研究分野はイノベーション論、技術経営論、マーケティング論、産学連携等。著書に『イノベーションの動機づけ:アントレプレナーシップとチャレンジ精神の源』(丸善出版)、『イノベーション&マーケティングの経済学』(共著、中央経済社)など。

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