今の若者が「とにかく差がつく状況が苦手」な理由 横並び主義が生む完全一律な平等分配思考

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日本人が思う最も公正な分配方法

ただし、このように均一に分配しようとするとき、もっとほしいという人と、逆に自分はいらないという人が出てくることも多いだろう。リンゴを皆に配りましょうと言っても、リンゴが嫌いな人にまで配ってしまってはもったいない。そんなときにまで均一に分配することが全体最適だとは思わない。

そこで②必要性分配が浮上する。これは個人の必要度に応じて分配量を変化させることで、より多くの人のニーズを満たそうとする考え方だ。仮に職務上は同じ給与水準の人でも、扶養家族を多く持つ人に(扶養家族手当として)少し多めに配分することは現実に行われている。少なくともこれが公正の1つの考え方であることに異論がある人は少ないだろう。

次は③実績に応じた分配だ。このあたりから分配方法はさらに現実的に、より意見が分かれる領域に突入していく。③はいわゆる成果主義に代表される分配方法で、多大な成果を上げた人は、それだけ多くの労力や費用を犠牲にしたのであり、分配はそれに応じるべきという考え方になる。

②の必要性に応じて分配する案は一見かなりフェアであるものの、分配対象者がまったく同じ量または質の仕事をしたという前提が必要になる。仮に扶養家族を持たないAさんのほうがBさんより組織に貢献したとして、それでも扶養家族が多いという理由だけでBさんの報酬が多かったら、Aさんのモチベーションはどうなるだろう。

このように②と③は反目するケースも出てくる。必要度の高い人、あるいは貧しい人に多くの施しを与えることが人道的であると言う人もいるし、必要度とは関係なく成果や貢献度にこそ報いるべき、そうしないと人も組織も成長しない、という論理も説得力がある。

このトレードオフを緩和する可能性を持つのが、④の努力に応じた分配である。その名のとおり、個人の努力量に応じて分配量を決定することで、③実績に応じた分配と対比されることが多い。実績は生まれ持った才能や育った環境の違いに影響される場合も多いため、③だと才能や環境に恵まれなかった人はいつまでも低い報酬に甘んじるしかない。一方、努力量は才能や環境と違い、自分で100%コントロールできる指標になるため、フェアで公正であるという考え方になる。

さてさて、前置きが長くなったが、改めて皆さんはどれを支持するだろうか? どれが最も多くの人の支持を集めると思うだろうか?

実は、実際にアンケートを用いて調査した結果がある(社会階層と社会移動全国調査:SSM調査研究会編〈1998〉『1995年SSM調査シリーズ』、および佐藤俊樹『不平等社会日本:さよなら総中流』〈中公新書〉より)。

結果はこうだ。

① 平等分配:男性5.2%、女性7.5%
② 必要性分配:男性9.8%、女性9.1%
③ 実績に応じた分配:男性30.4%、女性16.6%
④ 努力に応じた分配:男性51.2%、 女性62.2%

いかがだろうか? ④の「努力に応じた分配」が半数以上の支持を集める結果になっている。

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