中国の通信機器最大手の華為技術(ファーウェイ)は半年弱前の2021年12月、中堅商用車メーカーの小康工業集団と共同でスマートEV(電気自動車)の新ブランド「AITO(アイト)」を立ち上げた。現時点で販売しているのは、レンジエクステンダー型EVの「問界M5」の1モデルだけだ。
そのAITOは4月20日、生産コストの上昇を受けて問界M5の値上げに踏み切った。新価格は、後輪駆動タイプの標準モデルが以前より1万元(約19万8000円)高い25万9800万元(約514万円)。四輪駆動タイプも5月5日から値上げされる予定だ。
ファーウェイにとって、小康工業集団は自動車関連事業の重要なパートナーである。2021年4月、両社は小康工業集団の子会社の金康賽力斯汽車が生産・販売していた「セレスSF5」をベースにして、最初の提携モデルを鳴り物入りで発表。しかし売れ行きはぱっとせず、2021年末までの販売台数は約8000台にとどまった。
続いて投入したAITOの問界M5は、カーエレクトロニクスのOS(基本ソフト)にファーウェイが独自開発した「鴻蒙(ホンモン)」を採用。駆動システムにも同社製の「DriveOne(ドライブワン)」を搭載するなど、“ファーウェイ・カー”の色彩がいっそう強められている。
1~3月期の販売実績は5000台余り
ファーウェイのコンシューマー製品部門のCEO(最高経営責任者)で、自動車関連事業のトップを兼務する余承東氏は、問界M5の発表直後に年間販売目標を30万台とする強気の目標を社内でぶち上げていた。
ところが、目下の販売実績はそれをはるかに下回っている。小康工業集団が公表した速報値によれば、2022年1~3月期の金康賽力斯汽車の出荷台数は5044台。AITOブランドのEVは金康賽力斯汽車が生産しており、セレスSF5の生産はすでに終了していることから、この数字は実質的に問界M5の販売台数と言える。
「今年は10万~20万台を販売できたら奇跡だ」。余氏は最近、メディアの取材に応じた際にそう発言し、問界M5の販売目標を下方修正したことを事実上認めた。その背景には車載電池の原材料価格の高騰や、自動車用半導体の深刻な供給不足の影響がある。
「元々は1個数十元(約400~600円)で調達できた半導体が、(供給不足による奪い合いで)いまや2500元(約4万9500円)に跳ね上がっている。1台のクルマを生産するには、この種の半導体が9個必要だ。たとえ(問界M5の)販売台数が減ったとしても、こんな価格を受け入れることはできない」。余氏はそう具体例を挙げて、苦しい実情を打ち明けた。
(財新記者:安麗敏)
※原文の配信は4月23日
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