中国の「新エネルギー車」メーカーの北汽藍谷新能源科技(略称は北汽藍谷)は3月25日、2021年の決算報告を発表した。それによれば、売上高は86億9700元(約1665億円)と前年比65%増加したものの、純損益は52億4400万元(約1004億円)の赤字だった。ただし赤字額は前年より19%減少した。
(訳注:新エネルギー車は中国独自の定義で、電気自動車[EV]、燃料電池車[FCV]、プラグインハイブリッド車[PHV]の3種類を指す。通常のハイブリッド車[HV]は含まれない)
北汽藍谷は2018年、国有自動車大手の北京汽車集団の子会社である北京新能源汽車が既存の上場企業を「逆買収」して発足。現在は旧来からの「北京汽車(ベイジン)」ブランドとともに、2019年に新設した高級ブランドの「極狐(アークフォックス)」を展開している。2021年の総販売台数は前年と同水準の2万6127台、そのうちアークフォックスが6006台と4分の1弱を占めている。
2021年4月、北汽藍谷は中国の通信機器最大手、華為技術(ファーウェイ)と共同開発したスマートEV「アークフォックス・アルファーS・ファーウェイ・バージョン」を上海モーターショーで発表。ファーウェイの自動運転技術をフルセットで搭載した初のモデルとして鳴り物入りでアピールし、大きな注目を集めた。
法人需要への特化が裏目に
だが、当初は2021年10~12月期と予告していたファーウェイ・バージョンの納車開始は大幅に遅れており、2022年3月下旬時点でもまだ実現していない。北汽藍谷の副総経理(副社長に相当)を務める樊京濤氏は3月25日に開いたメディア向け説明会で、「近日中に納車開始時期を発表する」と述べた。
北汽藍谷は逆買収前の北京新能源汽車の時期を含めて、かつては中国の新エネルギー車の普及をリードする存在だった。販売台数のランキングでは2013年から2019年まで7年連続で首位を保ち、ピークの2019年には15万台以上を出荷した。
ところが、中国政府が新エネルギー車に対する補助金を削減したのをきっかけに、北汽藍谷の業績は急降下。2020年の販売台数は2万5914台と、前年比83%も激減した。2021年は前年割れこそ防いだものの、2年前とは比較にならない水準だ。
実は2019年まで、中国の新エネルギー車市場はタクシー向けなどの法人需要が中心だった。北汽藍谷はそこに特化することで販売を伸ばしていたが、補助金削減で法人需要が一気にしぼみ、その直撃を受けた。
一方、2020年の後半から、中国では新エネルギー車の個人需要が急速に拡大。だが北汽藍谷はその波にも乗り遅れた。市場の変化に対応し、アークフォックスを軌道に乗せて巻き返せるのか。同社は生き残りをかけた強いプレッシャーにさらされている。
(財新記者:余聡)
※原文の配信は3月26日
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