低価格車を得意とする中国の自動車メーカーの上海GM五菱汽車は3月24日、小型EV(電気自動車)の「宏光MINI EV」を値上げすると発表した。値上げ幅はグレードによって異なり、最低4000元(約7万6400円)から最大8000元(約15万2900円)だ。
宏光MINI EVは、中国国内で販売されているEVのなかで最も売れているモデルの1つだ。自動車販売会社の業界団体のデータによれば、2022年1~2月の累積販売台数は5万9200台と、車名別の販売ランキングで首位のテスラの「モデルY」に次ぐ第2位につけている。
人気沸騰の秘密は圧倒的な低価格だ。宏光MINI EVの廉価グレードの価格は(値上げ前の時点で)2万8800元(約55万円)。クルマの機能や装備、搭載する電池の量などを割り切った仕様にすることで、上海GM五菱汽車はこの価格でも中国政府の補助金抜きで利益を出していた。
ところが、車載電池に欠かせない(リチウムやニッケルなどの)原材料の大幅な値上がりが電池の販売価格に波及するなか、宏光MINI EV の低価格戦略は見直しを余儀なくされた格好だ。2万8800元の廉価グレードの価格が4000元上がれば、値上げ幅は14%近い計算になる。
テスラの値上げに続々追随
非鉄金属の情報サービス会社、上海有色網のデータによれば、車載電池の代表的な原材料の1つである炭酸リチウムの市場価格は、2022年の年初からの2カ月余りで1トン当たり30万元(約573万円)から50万元(約955万円)に跳ね上がった。2021年の年初と比べると実に8倍の水準だ。
2022年1月1日、テスラは上海工場で現地生産している2車種の価格を1万元(約19万1000円)値上げすると発表。その他のEVメーカーも続々と後に続き、3月下旬までに20を超えるモデルが値上げに踏み切った。
さらに今回、電池の搭載量が少ない宏光MINI EVまでもが値上げするに至り、業界関係者は今後のEV販売に水を差すのではないかと気を揉みはじめている。
そんななか、自動車業界のあるベテラン・アナリストは、財新記者の取材に対して次のような見方を示した。
「中国国内の2022年の自動車販売台数は前年比で減少する可能性があるが、販売全体に占めるEVの比率はむしろ上がるだろう。マイカーのオーナーは(車両価格よりも)日々のランニングコストを重視する。今はガソリン価格も高騰しており、EVのランニングコストのほうが優位にある」
(財新記者:安麗敏)
※原文の配信は3月25日
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