「電動キックボード」の不安が拭えぬ2つの法解釈 「免許不要」「ヘルメット任意」に混乱が生じた訳

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もう1つは、道路交通法における「海外との整合性を明確にする」こと。インバウンド需要の拡大が期待される中で必須だという認識が、国側で高まった結果だ。

これら2つは、商品やサービスの供給サイドの視点での発想が出発点で、またいずれも比較的短期間で議論され法改正にまで至った点で共通している。

そのため、歩行者、自転車、自動2輪車、自動車などの交通参加者から見ると「いきなり思い切った法改正が行われてしまった」という印象で、「大丈夫なのだろうか」と不安に思う人も多い。

SDGsで加速した「シェアリング」への関心

ここで、国内外における電動キックボードの規制緩和について、ここまでの動きを振り返ってみよう。

電動キックボードという商品自体は2010年代前半から市場で広まっていたが、シェアリング事業が本格的に普及するのは、2010年代半ば過ぎとまだ日が浅い。

北カリフォルニアのサンフランシスコでは、バイクシェアリング事業者だった「Lime」が2017年から電動キックボード事業を展開。同時期に、南カリフォルニアのサンタモニカでは「Bird」が創業する。ヨーロッパでは2018年、ドイツやスウェーデンで電動キックボードシェアリング事業者が次々と登場した。

2021年に東京都世田谷区で行われていたシェアリングの実証試験の様子(筆者撮影)

ラストワンマイル/ファーストワンマイルと呼ばれる数キロ圏内での移動サービスでは、中国で自転車を使ったビジネスモデルが2010年代前半から中盤にかけて次々と生まれていたが、あまりに急速に事業を拡大した反動で、事業継続が難しくなる事業者が増えていた。

そうした中、シェアリング事業に対する投資家の関心が、電動キックボードシェアリングに一気に動いたといえるだろう。

いずれにしても、自転車や電動キックボードのシェアリングについては、SDGs(国連・持続可能な開発目標)を軸足とした、ESG投資の影響が色濃い。

ESG投資とは、従来のように財務情報だけではなく、環境、ソーシャル(社会性)、ガバナンス(企業統治)を重視する投資を指す。ヨーロッパを起点として、日本を含めた世界各地で急激に進む昨今のBEV(電気自動車)シフトも、ESG投資の影響が極めて強い。

また、ESG投資の文脈では、欧米の都市中心部への自動車流入規制を強化する都市開発事業の中で、電動キックボードへの注目が高まったともいえる。

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