「電動キックボード」の不安が拭えぬ2つの法解釈 「免許不要」「ヘルメット任意」に混乱が生じた訳

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その中で「小型低速車(最高速度:時速15~20km以下)」を新たに設けたうえで、「運転免許を不要とするが、基本的な交通ルールに関する理解を担保するため、シェアリング事業者・販売事業者による利用者に対する交通安全教育の実施を求める」という記載があったのだ。

小型低速車など、小型モビリティに関する区分案(警察庁資料より抜粋)

また、同中間報告書(改正前の案)では、電動キックボードの海外制度調査では、イギリス、フランス、ドイツ、イタリア、韓国のそれぞれについて、「ヘルメット着用義務」「運転免許・年齢制限」「走行場所」「速度」の4項目について記載された。

電動キックボードに関する海外調査データ(警察庁資料より抜粋)

その後、警察庁では2022年2月25日から「パーソナルモビリティ安全利用官民協議会」が実施されているが、その中で公開された資料では、各種の小型モビリティについて、先の検討会での議論をさらに深める内容となっている。

中でも、2022年1月開会の通常国会で審議される電動キックボードに関する課題の検討が、当面の議論の主体であることがわかった。

また、国土交通省が「新たなモビリティ安全対策ワーキンググループ」を2021年10月13日から実施している。ここでは、小型低速車について「道路運送車両法を適用する」としており、直近では保安基準と型式認証制度について議論されているところだ。

法的な解釈が違う状態で並存するわかりにくさ

電動キックボードについて国内外での動きを時系列で見ていくと、法的には全体の枠組みが決まってきたとはいえ、一般の人にとっては「まだまだわかりにくい」というのが現状ではないだろうか。

改めていうが、電動キックボードは、既存の原動機付自転車(最高速度:時速15~20km超)と、新たに規定された小型低速車(最高速度:時速15~20km以下)としての特定小型原動機付自転車のそれぞれで、“法的な解釈が違う状態で並存すること”がわかりにくさの元凶となっている。

国は、こうした状況について周知するため、さまざまな広報活動などを行うとしているが、果たしてどうなるだろうか。電動キックボードについて、これからも多様な角度から取材を進めていきたいと思う。

また次回は、現行規定での電動キックボードユーザーの1人として、特定小型原動機付自転車としての電動キックボードの保安基準について考えてみたい。

桃田 健史 ジャーナリスト

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ももた けんじ / Kenji Momota

桐蔭学園中学校・高等学校、東海大学工学部動力機械工学科卒業。
専門は世界自動車産業。その周辺分野として、エネルギー、IT、高齢化問題等をカバー。日米を拠点に各国で取材活動を続ける。一般誌、技術専門誌、各種自動車関連媒体等への執筆。インディカー、NASCAR等、レーシングドライバーとしての経歴を活かし、テレビのレース番組の解説担当。海外モーターショーなどテレビ解説。近年の取材対象は、先進国から新興国へのパラファイムシフト、EV等の車両電動化、そして情報通信のテレマティクス。

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