NHKにも影響?BBC「受信料制度見直し」の意味 イギリス政府の白書が示した放送業界の激変

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テレビあるいはラジオの前に座って、同じ時間に同じ番組を見たり、聞いたりするのが主流だった「マスメディアの時代は終焉した」(白書)。

イギリスの主要放送局は新たなメディア環境に加えて、国内のコンテンツ市場に到来した「グローバル化の波」に対応せざるを得なくなっている。具体的には、アメリカ発の大手動画配信サービス、ネットフリックス、アマゾン、アップルなどで、イギリスの放送業者よりもはるかに大きな予算で国際的にサービスを展開している。

差が大きくつくジャンルの1つが、品質の高さで競う大型ドラマだ。イギリスの放送局の場合、主力ドラマの制作費は1時間200万ポンド弱(約3億2600万円)だが、国際的投資が入ったドラマはその3倍の600万ポンド(約9億7500億円)に相当するという(「ブリティッシュ・スクリーン・フォーラム」調べ)。

プラットフォーマーから「締め出されてしまう」

国際的にサービスを展開するこうした企業は自分たち自身のプラットフォームを持ち、その中で番組視聴を完結させるため、イギリスの放送業者は「締め出されてしまう」危険がある、と白書は指摘する。

上記のような市場の変化や新たなライバルの出現に対し、白書による提案の柱は、

・これまで通信・放送の監督機関オフコムの規制対象外になっていた大手オンデマンドサービスをオフコムの規制下に置く
・オンデマンドサービスのプラットフォームでは主要放送局の番組が優先的に選択できるようにする
・視聴者の視聴方法に合わせる形で、コンテンツを放送・配信しやすいようにする
・政府所有のチャンネル4を民間企業に売却する(民営化によって、長期的繁栄を託する)
BBCについては、
・受信料を今後2年間159ポンド(約2万5000円)のままとするが、その後2024年4月からはインフレ率と連動させる(生活費高騰で苦しむ国民の生活を支援するとともに、BBCの経営基盤を安定化させる)
・BBCの商業部門の借入限度額を2倍以上に増やす
・BBCの受信料制度について見直しを進める

BBCは約10年ごとに更新される「王立憲章(ロイヤル・チャーター)」によってその存立が定められている。現在の王立憲章は2017年1月から2027年12月末まで有効だ。これが終了するまでは、一律徴収型の受信料制度は維持することになっている。

ただ、政府とBBCは受信料制度を続行するかどうかも含めて「中間見直し」をすることで合意していた。2017年から6年目の2022年までが見直し対象の期間となり、政府とBBCは近く話し合いを始める見込みだ。

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