2000連休で自己啓発本を多読した男が悟った真実 即効性を求めることは近道のようで実は遠回り

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ただ、なんとなく思いはじめたのは、1冊の本を一度読んだだけで「新しい自分」になってしまうことはないし、仮にそんなことが起きればむしろ危険なんじゃないかということだ。

自己啓発書を読んでいた頃、自分が期待していたのはまさにそういう体験だったのだが、2時間ほどで1冊の本を読んで、それまでとはまったく別の自分になってしまうとすれば、それは洗脳と呼ばれるようなものだろう。
変わらないためにこそ「自分」はあるんじゃないのか。即効性を求めることは近道のようで遠回りになるのではないか。

聖書のような本だって、日常的に繰り返し読まれることで少しずつ人間を変えているように思う。本を読んで翌日に変わろうと期待するのは、ジムに行った翌日にクマ殺しをしたいと望むようなものなのではないか。

当分は多読することに決めた。本当に役に立つ本は、いかにも役立ちそうな見た目はしていない。それは理解した。まずは多読・乱読して、この世にどんな本があるのかを知る。そもそも読書の経験がほとんどないのだ。それは本を見る目が養われていないということだろう。その状態で次々に本を買えば金がかかるし、今の自分にそれは厳しいが、図書館を使えば金がなくとも本を読むことができる。素晴らしい施設だと今さらに思った。

難しい本を読むときに重要なのは「息つぎ」

しばらく手当たり次第に借りては読んだ。たくさん本を読んでいるうちに、少しずつ難しい文章も読めるようになってきた。このあたりは慣れの部分が大きいようだ。現状の自分に適した本を見抜くことも重要で、それぞれの本は、装丁の雰囲気やイラストの有無、文字の大きさや行間の広さなどで自身の難易度をアピールしている。ただ、これは言語化していなかっただけで新しい発見というわけではなく、読者である自分もその情報に気づかないうちに反応していた。要するに、高級料亭と吉野家を人は意識するまでもなく区別しているようなものなんだろう。

次ページ簡単すぎる本は退屈だが、難解すぎる本は手に負えない
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