これに対しおそらくは、新入社員から
「すごくやりたいことがあるわけではないですが、いろいろ経験したいと思います」
といった薄めの反応しか聞かれないことが多いのではないだろうか。
「いい子症候群」の若者の仕事観
新入社員から「マニュアルはないですか? テンプレはありますか?」と聞かれる先輩社員もいるだろう。
そう聞かれ続けて、「もう少し自分で考えてみたら」と伝えたら、「先輩から自分で考えろと圧をかけられた」と人事にハラスメントの報告があった、などということも今では珍しいことではない。
なぜこんなにもズレるのか。先輩社員たちは、少なからず頭を悩ませている。おそらくは寄り添うつもりで、やさしさを込めて笑顔で「やりたいことは積極的にどんどん言ってね」といった趣旨のことを伝えるかもしれない。
ところが、新入社員の方は、先輩の想定しないことを考えていたり、言ってしまう可能性があるのだ。「それってやりがい搾取ですか?」と。
これらは現在の職場ではよく見られる光景である。新卒の新入社員と既存の社員の間で、職場では何か大きなズレが発生しており、皆が困っている。
本書での著者の書きぶりはあくまでライトで、どんどん読み進められる一方、随所に若者の行動に関する興味深いデータも掲載されている。
著者によれば、「いい子症候群」の若者の仕事観は、
「とにかく人目は気になるし競争もしないけど、自分の能力を活かしたい」
「そこそこの給料をもらい残業もしないけど、自分の能力で社会貢献したい」
「自ら積極的に動くことはないけど、個性を活かした仕事で人から感謝されたい」
といったまとめになるという。
若者に接する機会のある読者には、納得のいく部分も多いのではないだろうか。
本書ではこうした仕事観がどうやってできあがってきたか、その恐るべき背景を、若者の自己肯定感と有能感の低さなどを挙げて丁寧に解きほぐしている。
本書で描かれる、「目立ちたくない」「絶対に何かを自分で決めたくない」「とにかく平等が良い」といった若者像に共感を覚える読者も多いことだろう。大人たちが感じていたズレや違和感を、この本では次から次へと言語化してくれる。
若者に対して職場で感じる違和感の謎を解明すべく、大人たちはツイッターの奥深くへと入っていったりもしているかもしれないが、本書で語られる『もう「意識高い系」とすら言わない』という現実に向き合うべきだろう。
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