ガツガツしていると思われること、周囲から浮いてしまうことを「恐怖」とまで表現する若者について理解を進めなければ、会社組織が成り立たない段階にきているように思える。
やりがいは安定の対極にあるもの?
一方で、新入社員の側も、会社に対する違和感、不満を抱えている。「何をすればいいかが曖昧でよくわからない」「いつまでにどの知識やスキルを身に付けておけばいいのか、一向に教えてくれない」のはなぜだろうと。
多くの若者の間では、入学試験と同様、仕事にも何らかのガイドラインやマニュアルがあると考える傾向がある、と著者は指摘する。確かに、若者とのコミュニケーションにそうした節を感じることもありうることだ。
本書に登場する、「自分はそっち系じゃないんで、やりがいとかは、ちょっと」と言う大学生は仕事に安定を望み、「やりたい仕事や働きがいを、安定の対極にあるものと捉える傾向にあるのだ」という言葉に、評者は衝撃を覚える。
安定を望み、協調より同調を重んじ、場を乱さないといった人材は、日本企業にとって理想的な従業員である可能性もある。一方で、安定や同調とは相反するイノベーションを希求する企業が多いなか、このギャップをどうとらえればよいのか、考えさせられる。
本書の著者は、日常的に大学生と接している大学教授であり、物理情報工学の博士でありアメリカでの研究の経験も持ちながら、ビジネスパーソンにも馴染のある「イノベーションのためのモチベーション」の研究者である。
大学生に近い場所にいる著者は、自らの経験を交え、無数の事例を挙げて、今の大学生の生態について考察を進める。
そうした事例のどれもこれも、大人たちが肩を落とすのに十分なズレを例示している。著者は最後に「いい子症候群の若者たちへ」というメッセージを用意しており、少し窮屈に見える若者たちにやさしい眼差しを向けている。
「頼まれたら全然やるんですけどね」と言ってのける若者にイラっとする大人たち、あるいは例を示さないと基本的に何もしない新入社員に絶望する先輩社員たち、そしてなぜ大人からイライラされているかがわからない若者たちに、ぜひ手にとってほしい本である。
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