新人を「早く立ち上がらせる」ちょっとした工夫 「マネージャーが見せるべきは“物語"だ」
――人を動かすためにも、言葉の力は必要ですね。
仰るとおり、目標やゴールの設定においても伝える力が必要になります。特に新メンバーを受け入れる時はより丁寧に目標設計をすべきですし、メンバーがどうしたら納得して動いてくれるかを考えなければなりません。
そして言語化能力はもちろんのこと、いいマネージャーは「ナラティブ(物語)」の提示が上手だと思います。
例えば、「われわれはこのような理念に基づいてプロダクトを開発している。今はこの試練に直面しているけれども、いくつかのステップを踏むことでそこを解決していきたい。現状はこの段階だ」というように、自分たちの現状とやるべきことをストーリーとして説明するわけです。
そうすると、メンバーは自分たちが今していることの価値を再確認して、納得して頑張ることができる。新メンバーであれば特に、なぜ自分がこの仕事をしているのかを確認できるいい機会にもなるでしょう。
「ちゃんと言葉にする」
――日本企業だと、「今期の目標数値はこれです」と終わらせることも多そうです。
そうかもしれません。こちらではよく「bias to overcommunicate(オーバーコミュニケートの傾向で)」と言われます。つまり、コミュニケーションし過ぎる方が足りないよりはマシ、仮に間違っていたとしてもオープンにしてみんなで認識合わせた方が黙ってるよりマシ、ということです。
人というのは分かり合えない、特に多様なバックグラウンドを持っている人たちならなおさら。それを前提として、どうしたら同じ理解の土壌に立てるかを考えて努力するのが自然なことだと、シリコンバレーでは認知されています。
僕もかつては、こういうコミュニケーションが苦手でした。プロダクトマネージャーとしてナラティブを提示しなければいけないのにできなかった。その結果、プロジェクトの進行を遅らせてしまった苦い経験があります。
――前回の記事でも、日本とシリコンバレーの「ハイコンテクスト/ローコンテクスト」文化の違いが問題に挙がっていましたね。「ちゃんと言葉にする」のは、日本企業がもっと学ばねばならないポイントです。
はい。今はコロナ禍で外国との行き来もままなりませんが、これからは日本のIT企業もさらに人材が多様化してくるはずです。そうなった時に、マネージャーは今までの仕事の仕方のままで本当にいいのか、それを多様なメンバーに押し付けることは問題ではないか、真剣に考えておくべきだと思います。
シリコンバレーの企業には多様な人材が集まりますから、常に組織の在り方を変化させてきました。もちろん、シリコンバレーのやり方がすべて正しいとは思いませんが、それで上手くいっている企業が多いのも事実です。
日本企業も今後、転職がさらに活発化して多様な人材の流動も増えていくはずですから、こちらのやり方のいいところを取り入れつつ、「自分たちにはどんな方法が望ましいか」ともっと真摯に向き合う必要があると思いますよ。
取材・文/高田秀樹 編集/大室倫子
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