新人を「早く立ち上がらせる」ちょっとした工夫 「マネージャーが見せるべきは“物語"だ」

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Time(時間)」は、その人の活動時間のスタイルです。例えば朝型なのか夜型タイプなのか、メンバーと僕とで働く時間帯の時差がどれくらいあるのか。それによってコミュニケーションの仕方も変わってきます。

Control(コントロール)」は、メンバーが「自分に任せてほしい」タイプなのか、「ちゃんと指導してほしい」というタイプなのかということ。任せてほしいタイプであればゴールだけを伝えてやり方は任せてみる、後者であれば要望を明文化して的確な指導をするようにします。

Uncertainty(不確実性)」は、「とりあえずやってみる」タイプなのか、慎重で確実性がないと動けないタイプなのか。

そして「Information Processing(情報処理能力)」は、そのメンバーが「一を聞いて十を知る」タイプなのか、ちゃんと具体的で明確な指示に落とし込んだ方がいいタイプなのかを見極めるということです。

――その人の性格によって、マネジメントスタイルを変えているんですね。

はい。まずはこの4つの視点で、個人の特徴を把握して、それぞれのエンジニアに合わせて、マネージャーがコミュニケーションの仕方を変えていくのです。

実はこれ、僕がつくった理論ではなくて、UXの世界で有名なアラン・クーパーさんが言っていたことをアレンジしたもの。彼のUXのトレーニングプログラムを受けた時にこの4つの視点の話を聞いていいなと思ったので、それをエンジニアのマネジメントに適用したらうまくいったんですよ。

――デザイナーとエンジニアのマネジメントには、近しいものがあるのかもしれませんね。では、ご自身のチームに新メンバーが入ってきた時に、すぐにその新人が活躍できるように意識していることはありますか。

これは前回話した転職者へのアドバイスと逆の視点になりますが、僕は新しく入ってきた人に対して、「どんな小さなことでもいいので、分からないことがあったらすぐに質問をしてほしい」と伝えています。またそのために、自分が常にオープンであることを意識しています。

新しく入ってきた人は、必ず何かしら疑問や質問を持つはず。それを抱えたままにせず、Slackなどを使ってできるだけ早くフィードバックするように心掛けています。

「カルチャー」でメンバーの自律を促す

――シリコンバレーの企業では一般的に、エンジニア転職者の早期立ち上げのためどんな工夫をしているのでしょうか?

多くの企業では、早期に自社で活躍してもらうために「カルチャーの醸成」を重視していると思いますね。

そもそもシリコンバレーの企業は、その会社ごとのカルチャーを非常に大事にする特徴があります。カルチャーというのは言い換えれば、「会社の意思決定パスを通さなくても、自分で決断をできるようになるための拠り所」です。

例えば、「信頼」が会社のカルチャーとして重要視されるのであれば、そのプロダクトを使ったユーザーの体験が信頼を裏切るものであってはいけないという判断基準が立てられる。それを各メンバーが個人で決断できるレベルまで落とし込んでおくんです。

仕事をしていれば日々決断をしなければいけないことはたくさんあります。それをいちいちマネージャーにお伺いを立てていたら、意思決定は遅くなりますし、マネージャーも仕事になりませんから。カルチャーが浸透すれば、メンバーが自分で決めて、素早く動いてもらえるようになるというわけです。

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