しばしば、「中小零細企業では労働組合の力が弱く、交渉力が弱いから、賃金が低くなる」と言われる。
この考えが正しいかどうかを、以下に検討することにしよう。
法人企業統計調査によって、いくつかの指標を算出すると、図表2のとおりだ。
法人企業統計調査のデータは、図表1のものと少し違うが、傾向は同じだ。全産業、全規模での1人あたり給与は370万円であり、民間給与実態統計調査と同じだ。
製造業が467万円であり、非製造業が343万円だ。
このデータでも、給与は企業規模によって明らかな違いがある。資本金10億円以上の企業(大企業)の賃金は、資本金2000万円未満の企業(零細企業)の2.6倍だ。製造業の場合は、この比率が2.8にもなっている。
ところが、労働分配率について、大企業が高いという傾向は見られない。
むしろ、大企業が低く、中企業が高くなっている
したがって、大企業で給与が高くなるのは、分配率が高いからではないことがわかる。
中小零細企業の給与が低くなるのは、給与の原資である1人あたり付加価値(これを生産性という)が低いからだ。これは、図表2から明らかに見て取ることができる。
賃金を決めるのは、資本装備率
では、生産性を決めるものは何か?
経済理論によれば、それは資本装備率である。
経済理論は、つぎのように論じている。
コブ・ダグラス生産関数と呼ばれる生産関数を想定すると、1人あたり付加価値は、資本装備率(従業員1人あたりの固定資産)の(1-a)乗に比例する。
ここで、aは労働の付加価値弾力性(労働力を1%増やすと、付加価値がa%増加する)である。そして、労働分配率はaに等しくなるはずである。
現実がどうなっているかを、法人企業統計調査のデータを用いて検証してみよう。
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