給料が高い会社とそうでもない会社の決定的な差 規模、業種、労働組合、分配率、生産性を見ると?

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◆業種別の差が生じるその他の原因(2)参入規制

図表1でわかるように、規模別格差は、業種によって異なる。

金融業,保険業、電気・ガス・熱供給・水道業など参入規制がある業種では、平均給与が高いだけでなく、規模別格差も大きい。

それに対して、卸売業,小売業、宿泊業,飲食サービス業、医療,福祉などでは、平均給与が低いだけでなく、規模間の格差も小さい。

これは、金融業,保険業、電気・ガス・熱供給・水道業の大規模企業の給与が高いのは、参入規制による面もあることを示唆している。

ファブレス製造業の生産性は高い

ファブレス製造業(工場を持たない製造業)が登場している。この生産性は、きわめて高い。

その代表がアップルだ。同社が時価総額ランキングで世界トップになっているのは、iPhoneという優れた製品を持っているからだが、それだけでなく、ファブレスによる生産方式を確立したからだ。

日本のキーエンスも、ファブレスによって、高い生産性を実現している。

ファブレス企業は工場を持たないので、従来の定義によれば、資本装備率は高くないだろう。

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したがって、「資本装備率が高ければ生産性が高い」という上記の理論は、当てはまらないように見える。

しかし、問題は、企業会計がファブレスに対応していないことにあると考えるべきだろう。

ファブレス企業は、従来の意味での固定資本をあまり持たないかもしれないが、新しい形の無形資産やビッグデータを持っているために生産性が高いのだと考えることができる。

そうだとすれば、固定資産概念の見直しが必要になっていると言える。

従来の経済理論や企業会計のあり方に、根本的な修正を迫る変化が生じているのだ。

野口 悠紀雄 一橋大学名誉教授

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のぐち ゆきお / Yukio Noguchi

1940年、東京に生まれる。 1963年、東京大学工学部卒業。 1964年、大蔵省入省。 1972年、エール大学Ph.D.(経済学博士号)を取得。 一橋大学教授、東京大学教授(先端経済工学研究センター長)、スタンフォード大学客員教授、早稲田大学大学院ファイナンス研究科教授などを経て、一橋大学名誉教授。専門は日本経済論。『中国が世界を攪乱する』(東洋経済新報社 )、『書くことについて』(角川新書)、『リープフロッグ』逆転勝ちの経済学(文春新書)など著書多数。

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