塩野:残業しなければいけないのは、管理者が悪いということですか。
田中:そのとおりです。
塩野:それをどこかで発言すると、みんななんて言いますか。
田中:だいたい想像つくでしょう。みなまで言わせるな(笑)。日本の会社は「1を言ったら10わかるのが成長だ」という感覚じゃないですか。だから、たぶん、会話が成り立ってないんですよね。上司が「あなたに求める仕事はここまでです」と言い、それに対して部下が、「その中で私ができるのはこれです」という会話が成り立っていない。
本当は成果主義って、双方の合意をスタートラインとして、これから1年間、あるいは半年、頑張りましょうとなる。それから成功を測っていくんですけど、たぶんそこがあいまいなんですよ。
まじめなお母さんほど壁にぶち当たる
たとえば、今まで男性並みに10時間、12時間働いてきた女性が、子供ができて勤務時間を6時間、7時間と出産前の半分以下に減らす。そこでまじめなお母さんほど、ぶち当たる壁があって、それは今までと同じ成果が出せないということ。
塩野:そうですね。それは本当によく聞くお話ですね。
田中:でも本当は時短しているのだから、お給料を返上しているんですよ。返上した分、私の業務も返上させてくれと言いたいんだけど、それは言えない。
塩野:それはなぜ言えないんですか。
田中:やっぱり、「あなたの求める成果はこれで、私のできることはこれ」という会話がなされていないからでしょうね。
塩野:その会話を企業側もするべきですね。極論すると、野球選手と球団の関係のように、「これだけ働くから、これだけください」というような。そういう直接的なコミュニケーションが、一般的にはなされていないという意味ですね。
田中:たぶん、なされていないと思う。だからお互いに、何をさせていいかわからない。上司は短い時間で働く人に何をさせていいのかわからない。お母さん側は、やりたいけれども、ちゃんとできるかどうかわからないし、どこまで踏み込んでいいのかわからない。
塩野:私自身は投資銀行やコンサルティングなどのプロフェッショナル・ファームにいて、20代の頃からけっこう女性上司が多かったんですね。私は女性上司にも、月500時間以上働かされてきたわけです。「この仕事が期限内にできてないのは、あなたが寝たからでしょ? そういう人はこの仕事は向いてないから」と言われて育ちました。そういうハードな環境ですが、戦略系コンサルはプロジェクトベースなので、いわゆる部署がないんですよ。なので、最初はすごく大変でも、一定のハードスキルを身に付ければ、たとえば長期間の育休をとっても絶対に帰ってこられる。自分の部署やポジションがなくなることはない。新たなプロジェクトが待っているだけなので、職場復帰がしやすいというのはあります。
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