塩野:あとは「結果がすべて」というコンセンサスができているので、時間の使い方がわりと自由なんですよね。たとえば午後の早い段階で家に帰って、子供が寝静まってから仕事をする、みたいなことが、けっこうできてしまう。
この環境はすごく特殊だと思うのですけど、実現できている事例として存在します。一方で、先ほど田中さんがおっしゃったような、9時から5時の勤務時間のはずなのに、上長とのコミュニケーションがうまくとれていないから、長く働いてしまって、家庭という事業もやっているのに、今までと同じパワーは発揮できないという悩みを抱えている人もいる。このギャップはどうしたら埋められますか。仮に、何でもできるとしたらどうしたらいいですか。
働き方の価値観は多種多様
田中:まず、みんながみんな100%働きたいのだという固定観念を外したほうがいいと思いますね。今の、家に帰ってから働くというやり方。私も1回寝てから2時に起きて仕事することはありますが、みんながそこまでしたいわけではない。でも、それをやりたい人たちもいるんですよ。人の価値観はそうとう多様になってきているので。
塩野:そうですね、そう思います。世の中、そんなに働きたい人も働いている人もいないと思います。
田中:今の話は、労働時間に関係なく成果に対して報酬を払う、ホワイトカラー・エグゼンプションみたいな話ですよね。ハードワークで命を縮めるかもしれないけど、その代わり報酬はたっぷりある、それでいいという合意の例じゃないですか。
あらゆる職業で働くお母さんが、子供を持ちながらさらに仕事を続ける環境が整うためには、やっぱり自分が提供できる時間と成果をはっきりさせて、企業側と合意を形成することだと思います。
塩野:明示的な合意形成ですね。
田中:あと、ちょっと厳しい言い方をすれば、本人側も自分ができる範囲をちゃんと計算しなければならない。今の自分の身体の状態、生活の状態では何時間くらい働けそうで、どれだけ成果を出せるかを、シビアに考えていかなければならない。たぶんそういう発想って、残念ながら今は少ないかもしれない。
あとは短い時間で働けるということが、すべての職業でできるようになるといいですよね。家に帰ってから働くというのも、結局は長時間労働なので。たとえばすごく極端な例を言えば、すごくスキルのあるお母さんが、三つ子ちゃんを生みました。ひとりはすごく身体が弱かった。でも自分はこの職業が好きだから続けたいけれど、子供がもうちょっと大きくなるまでは、どうしても短い時間でないと自分の体力がもたない――という場合に、対する対処がちゃんとできる環境が整うといいですね。
塩野:その環境をつくるのは、今は企業の役割ということですか?
田中:企業側だと思います。
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