ママが働ける環境を作るのは企業の責任です 短い時間でも働けるような仕組みが必要

✎ 1〜 ✎ 19 ✎ 20 ✎ 21 ✎ 最新
拡大
縮小

塩野:あとは「結果がすべて」というコンセンサスができているので、時間の使い方がわりと自由なんですよね。たとえば午後の早い段階で家に帰って、子供が寝静まってから仕事をする、みたいなことが、けっこうできてしまう。

この環境はすごく特殊だと思うのですけど、実現できている事例として存在します。一方で、先ほど田中さんがおっしゃったような、9時から5時の勤務時間のはずなのに、上長とのコミュニケーションがうまくとれていないから、長く働いてしまって、家庭という事業もやっているのに、今までと同じパワーは発揮できないという悩みを抱えている人もいる。このギャップはどうしたら埋められますか。仮に、何でもできるとしたらどうしたらいいですか。

働き方の価値観は多種多様

「みんなが寝ずに働きたいわけではない!」

田中:まず、みんながみんな100%働きたいのだという固定観念を外したほうがいいと思いますね。今の、家に帰ってから働くというやり方。私も1回寝てから2時に起きて仕事することはありますが、みんながそこまでしたいわけではない。でも、それをやりたい人たちもいるんですよ。人の価値観はそうとう多様になってきているので。

塩野:そうですね、そう思います。世の中、そんなに働きたい人も働いている人もいないと思います。

田中:今の話は、労働時間に関係なく成果に対して報酬を払う、ホワイトカラー・エグゼンプションみたいな話ですよね。ハードワークで命を縮めるかもしれないけど、その代わり報酬はたっぷりある、それでいいという合意の例じゃないですか。

あらゆる職業で働くお母さんが、子供を持ちながらさらに仕事を続ける環境が整うためには、やっぱり自分が提供できる時間と成果をはっきりさせて、企業側と合意を形成することだと思います。

塩野:明示的な合意形成ですね。

田中:あと、ちょっと厳しい言い方をすれば、本人側も自分ができる範囲をちゃんと計算しなければならない。今の自分の身体の状態、生活の状態では何時間くらい働けそうで、どれだけ成果を出せるかを、シビアに考えていかなければならない。たぶんそういう発想って、残念ながら今は少ないかもしれない。

あとは短い時間で働けるということが、すべての職業でできるようになるといいですよね。家に帰ってから働くというのも、結局は長時間労働なので。たとえばすごく極端な例を言えば、すごくスキルのあるお母さんが、三つ子ちゃんを生みました。ひとりはすごく身体が弱かった。でも自分はこの職業が好きだから続けたいけれど、子供がもうちょっと大きくなるまでは、どうしても短い時間でないと自分の体力がもたない――という場合に、対する対処がちゃんとできる環境が整うといいですね。

塩野:その環境をつくるのは、今は企業の役割ということですか?

田中:企業側だと思います。

次ページ「時短でも働き続けることが大切」
関連記事
トピックボードAD
キャリア・教育の人気記事
トレンドライブラリーAD
連載一覧
連載一覧はこちら
人気の動画
日本の「パワー半導体」に一石投じる新会社の誕生
日本の「パワー半導体」に一石投じる新会社の誕生
TSUTAYAも大量閉店、CCCに起きている地殻変動
TSUTAYAも大量閉店、CCCに起きている地殻変動
【田内学×後藤達也】新興国化する日本、プロの「新NISA」観
【田内学×後藤達也】新興国化する日本、プロの「新NISA」観
【浪人で人生変わった】30歳から東大受験・浪人で逆転合格!その壮絶半生から得た学び
【浪人で人生変わった】30歳から東大受験・浪人で逆転合格!その壮絶半生から得た学び
アクセスランキング
  • 1時間
  • 24時間
  • 週間
  • 月間
  • シェア
会員記事アクセスランキング
  • 1時間
  • 24時間
  • 週間
  • 月間
トレンドウォッチAD
東洋経済education×ICT