ウクライナ難民受け入れフランス移民政策の混沌 仏政府の姿勢に「ダブルスタンダード」と批判も

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ウクライナ難民が宿泊する施設(筆者撮影)
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フランス北部の街が今、ロシアのウクライナ侵攻により揺れている。

パリから電車で約1時間半、英仏海峡をのぞむフランス北部の街、カレー。海水浴目当ての観光客でにぎわう夏以外は霧につつまれ、哀れっぽい声で鳴くカモメが舞う、どこか沈んだ雰囲気の漂う場所である。

人口約7万5000人と小さいこの街は、本来であればメディアが取り上げるような街ではない。

だが、対岸のイギリス・ドーバーへ抜けるフェリーとユーロトンネルがあるため、例えば、スーダン・エリトリア・アフガニスタンなど中東やアフリカからフランスを通過してイギリスを目指す移民(注:この中には、難民申請をしていて認定される可能性のある人、まだ申請をしていないが同じく認定されるかもしれない人、そしていわゆる経済移民と言われる人も含まれる)のルートの欧州大陸側の最終地点として知られている。

圧倒的ウクライナ支持のフランス世論

イギリスへの入国条件が年々厳しくなる中、現地では行き場を失った移民があふれかえり、2016年に解体された移民キャンプ「カレーのジャングル」の人口は最大で1万人にも達した。

カレーだけで10以上を数える支援団体によれば、正規の入国ルートが閉ざされる中、イギリス行きのトラックの屋根につかまるなど危険な方法で違法入国を試みる移民が絶えず、1990年代以降300人以上が事故などによってカレー周辺で命を落としている。2021年11月末にも移民を乗せドーバー海峡を渡ろうとしたゴムボートがカレー沖で沈没。少なくとも27人が亡くなったと報じられている。

巨大化しすぎて収拾がつかなくなったため「ジャングル」がフランス当局により解体された後も、カレーの郊外には依然として複数の移民キャンプがあり、現在も合計で1500人から2000人ほどの移民が文字どおり泥の中での非衛生な暮らしを余儀なくされている。このような中で2月末に勃発したのがロシアによるウクライナ侵攻である。

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