カレーのもうひとつの主要な支援団体、Auberge des migrants(移民の宿)の広報担当ウィリアム・フイヤール氏によれば、コロナ以降、県の条例によって食糧の炊き出しが感染対策という名目のもと禁止され、しかもその範囲も段々と広がってきているという。
「最初は市の中心だけだったのが、今はもうここ(注:団体の事務所は市中心部から5km程度の場所にある)もダメ」だとフイヤール氏は苦笑する。
また警察による移民キャンプからの追い出しも恒常的に行われており、「移民が生活できないようにして、人が来ないようにしているのだが、それでもアフガンやアフリカでの情勢が悪いので、ここ数年ここに来る人の数は変わっていない」とフイヤール氏は続ける。
受け入れの差についてカレー市は?
ウクライナ人とその他の移民の受け入れの差に関して、カレー市は欧州連合(EU)がウクライナ人に一時的保護と1年の滞在許可(その後1年間延長が可能)を与えていることを理由にしている。
だが今まで散々苦い思いをさせられてきた支援団体にこの論理が通用するはずもない。「人種差別的な対応だ」とデメステール神父は語気を強める。「市や国はほかの国の移民もウクライナ人と同様の受け入れをすべきだ」とフイヤール氏も述べる。
だがおそらく、この状況でもっともやりきれない思いを抱えているのは移民キャンプでの暮らしを強いられている当の移民たちだ。2020年12月にカレーに到着し、3カ月移民キャンプで暮らした後でデメステール神父の団体に保護され、現在はフランスで難民申請中のスーダン人スハイルさん。
彼の母国、スーダンでは2019年に市民のデモをきっかけに30年続いた長期独裁政権が崩壊したあと、軍がクーデターによって政権を掌握し、反対する市民を武力で鎮圧し死者を出すなど、不安定な情勢が続いている。
「ウクライナ人を助けるのはいいのだが、彼らと私たちのいったい何が違うのか……」と複雑な心境を語った。
ロシアのウクライナ侵攻を契機に移民大国フランスを含むヨーロッパは大きく揺れていた。
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