ロシアによるウクライナ侵攻が長期化し、消耗戦になる様相が濃くなってきた。今後、世界経済はどんな影響を受けるのか……。経済面を中心に考えてみたい。
一部には「西側諸国をはじめとする経済制裁がロシア経済にダメージを与えて、短期間で収束するのではないか」といった見方もあるが、プーチンがロシアの大統領である限り、その可能性は低いといわれる。
これまでプーチン大統領がやってきた領土拡大の戦略はつねに「攻めてはひき、ひいてはまた攻める」の繰り返しで、のらりくらりと長引かせて最終的には領土を拡大していく。ロシアはそんな戦術を得意としている。世界中がその脅威に気がついて、経済制裁などを強化しているが、こうした経済制裁によってロシアがどこまで疲弊するか。年単位で、長期化する可能性が高いともいわれる。
長期化で注目されるのは食糧問題とエネルギー?
戦争の長期化によって表面化しつつあるのは、穀物を含めた食糧の供給不足、そして原油や天然ガスなどのエネルギー問題だ。この2つは長期化すればするほど、大きな影響が出ると懸念されている。ただ、これだけに終わらないのが戦争の惨禍でもある。戦争の長期化によって問題になるものをいくつかピックアップしてみよう。
直近の課題としては、食糧不足が最も大きな懸念になるだろう。とりわけ、ロシアとウクライナを合わせて世界の輸出量の3割を占めている小麦の存在感は大きい。アメリカの農務省(以下、USDA)の発表によると、2021~22年度の小麦の世界輸出が2月予想の時点から、ウクライナ侵攻によって360万トン減少するという予測を発表している。
USDAの見込みによれば、ロシアは世界の小麦輸出の17.1%(2021/22年度)を占め輸出量で世界第2位、ウクライナも同11.8%を占めている。もともと穀物の価格はパンデミック等の影響で上昇していたのだが、2月24日にロシアがウクライナに侵攻して以降、シカゴ商品取引所(CBOT)の小麦先物は1週間で12%上昇した。
ウクライナとロシアの小麦に依存している人口は約8億人といわれている。中国やエジプト、インドネシア、トルコ、パキスタンといった国々は、両国の穀物輸入に依存しており、ウクライナが2022年の種まきのシーズンを逃してしまうと、深刻な食糧不足に陥りかねない。とりわけアフリカや中東諸国は小麦の価格高騰で、飢餓に追い込まれる可能性が指摘されている。
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