自然光が上部から差し込む地下の体育館に入ると、最初に驚いたのは室内の暖かさ。そして、お菓子や食べ物がある場所や、子ども向けの遊具が並ぶ一角を通り抜けると、布で間仕切りされたベッドが並ぶ「個室スペース」がーー。それは私たちがテレビなどで見る、いわゆる「避難所」とは大きく違うものでした。
フランスには今、ウクライナから多くの避難者が訪れていますが、彼らが滞在するパリ市の体育館で避難所の「個室」作りに貢献しているのが、日本人建築家の坂茂氏です。
パリ市の体育館が「快適な避難所」に
フランスに到着するウクライナ人の支援を行うフランス赤十字によると、多くのウクライナ人はパリに24〜48時間滞在した後、スペインやポルトガルを目指すそうです。こうした短期滞在者向けの施設として、パリ市は3月9日、10区と12区にある2つの体育館を避難所として提供しています。
10区の体育館は3月9日からウクライナの人々の受け入れを開始。筆者が訪れると、ところどころにキリル文字が印刷された説明書きが貼ってあり、通常のパリの公共施設とは異なることがわかります。
冒頭のとおり、室内は汗ばむほどの暖かさ。薄着で過ごせる室内は快適で、きめ細かな配慮を感じました。体育館の半分はテーブルと椅子のあるコーナーと遊具コーナーが。テーブルの置いてある空間は、大人の背丈以上の木と、背の低い花の植木鉢で交互に囲われており、緑による癒し効果が期待できます。「滞在者の尊厳を守り、静かでくつろげる空間を提供したい」とパリ市は説明しています。
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