ウクライナに対するロシアの激しい攻撃が続いている。プーチン大統領は5月9日の対ドイツ戦勝記念日に、ウクライナ東部制圧で勝利宣言をしたいと考えているともいわれるが、台所事情はかなり厳しい。
戦争を続けるには「カネ」が必要である。名目GDP(IMF推計)が1兆4785億ドル(約185兆円)のロシアにとって、1日当たり2000億円~2兆円と推定される戦費は重圧となる。
加えて欧米による経済制裁によりロシア経済はすでに年率10%を超えるマイナス成長に陥っていることは確実だ。世界有数の資源大国とはいえ、戦争を長期間継続することは難しい。経済制裁を受けて使える外貨準備が激減し、資本の海外流出もみられる。
通貨ルーブルの価値はロシア中央銀行が20%近く政策金利を引き上げるなどしたことで一時的なリバウンドはあるにせよ、成長の鈍化とともに趨勢的に低下していくことは避けられないだろう。現状15%程度にとどまっているインフレ率も、いずれ通貨安に伴って上昇し、国民生活を圧迫する。
ロシアのウクライナ侵攻は、入念に準備されてきた側面も指摘できる。侵攻すれば欧米による制裁措置は予想されたものだが、予想を超えた金融制裁にロシアの通貨、株式、国債はトリプル安に見舞われた。
「金」保有が過去10年あまりで4倍超
その一方で、ロシアは対抗余力を保持しているとも見られる。担保するのは「金(きん)」保有だ。
ロシアはウクライナのNATO加盟が先鋭化しはじめた2019年に金地金(きんじがね)の輸入を開始した。当時は、この金地金の輸入については、アメリカドル依存からの脱却を目指すプーチン大統領の指示と見られたが、今回のウクライナ侵攻で、その真意が単なるドル依存からの脱却だけではなく、ルーブル防衛にあったことが明らかになった。
ロシアの金保有高は、2010~2020年にかけて4倍超に急増。ロシアの外貨準備に占める金地金の割合は最大で、2020年6月現在で約2300トンに達する。アメリカ、ドイツ、イタリア、フランスに次ぐ5位の保有高を誇る。
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